リモートワークでの成長方法とマネジメントの要点

リモートワーク(在宅勤務)

リモートワーク下のマネジメントは、問題が連続的に発生します。

業績問題はもちろんですが、細やかなコミュニケーションギャップやメンバーがサボっていないかどうかという疑心暗鬼で、管理職は苦労しています。

在宅勤務で仕事する際に必要なマネジメントのコツを紹介します。

業績の担保はできる・・・短期的には

生産性への影響なし

リモートワークでの業績影響は、多くのアンケートの平均をとると28%以上が「影響なし」or「生産性が上がった」と回答しています。

ウェブアンケートの特性上、IT系企業からの解答が増えるためそもそも28%という数字に懐疑的ではありますが、実際に新型コロナウイルスの影響が業績に及んでいない会社は数多くあります。

過去の財産で食べていける

経営者やマネージャーが抱えている悩みは、いま見えている数字や業績ではありません。

コロナ禍での在宅勤務期間はまだ4ヵ月程度にすぎず、過去の財産を食いつぶすことで業績が保たれていることを認識しているため、能力あるトップは「影響なし」とは答えません。リモートワークの悪影響は数多くあります。

リモートワークの課題

極端な成果主義になりやすい

リモートワークでの業績評価は、成果主義になりがちです。成果主義になることは全く問題なくむしろそうすべきですが、リモートワークで問題になるのは「極端な」成果主義です。

チャットの文字やKGIでの評価偏重になってしまうため、会社の方向に合わせて誰よりも動いてくれる人材に対しての評価が失われていき、企業カルチャーを消失していくことに繋がります。

サイバーエージェント藤田さんのブログは、この状況下に迷っていた方に金言でした。

非常事態宣言から約1ヶ月半、サイバーエージェントでは全社員が原則リモートワークでしたが、その解除の方針を受けて6月1日から通常に戻すことを全社メールで社内に伝えました。(中略)

リモートでは一体感、チームワークは損なわれます。また、リモートではかなり極端に成果主義、個人主義に振らざるを得なくなり、それは当社の根本的なカルチャーと相性が悪いです。それらは数値には出来ないですが、当社にとっては強みが失われかねない由々しき問題です。

渋谷で働く社長のアメブロ:これからの働き方について

ご存知のようにサイバーエージェントは国内屈指のIT企業です。どの企業よりもリモートワークをかんたんに実行できる力がありながら、出勤する道を選択しています。

深く洞察せずにリモートワークが賞賛される昨今において、藤田さんの発信はリモートワークの良いところ悪いところを天秤にかけ、良いところを残しつつ何が一番大事かを見極める参考になりました。

雑談が生じにくい

雑談の力は偉大です。実際、雑談は生産性を向上させるというデータが実証されています。

日立製作所で働き方のデータ研究をしている矢野和男さんの解析では、雑談が弾んだ場合、雑談をしたメンバーだけではなく、組織全体の生産性が30%向上しているとレポートしています。雑談が弾む日は売り上げも増。働き方をデータで改革

雑談という偶発性が及ぼす影響は多くありますが、最もわかりやすい利点は「相談しやすくなる」ことです。普段相談に億劫になったり、相手の時間を奪うことに迷いが生じているメンバーも、雑談というきっかけがあれば心理的負担がなく相談できます。

リモートワークでは、雑談を発生させる機会を意図的につくらないと、報告と共有のみの一方通行な組織になりがちです。

新たなビジネスチャンスを事業化するには、クリエイティブな発想がぶつかり合う「化学変化」が必要です。テレビ会議では、全員が参加で会議が終わると、退出してしまい、コミュニケーションは終了してしまいます。「化学変化」の機会は、リモートワークでは生まれにくいのです。
イノベーションには、そんな「無駄」が必要で、リモートワークで効率性だけを追求すると、それが失われていきます。

リモートワークの推進は長期的に企業を衰退させる

雑談がないことに対しての危機感を強く持たないと、短期的にも長期的にも組織および企業を弱体化させます。

成長の可視化が難しい

リモートワーク下での最大の弱点は、成長機会が少なくなっていくこと、成長の可視化がしにくいということです。

雑談含め、通常の出勤形態では上司などから数多くのはなしに触れられますが、リモートワークではそもそもグループチャットが狭いコミュニティになりがちであり、成長機会が目減りします。それが数日、数か月続けば恐ろしい差がつきます。

また、成長したかどうかのジャッジも在宅勤務の特性上、新たな工夫が求められます。

リモートワークの本質

仕事のデジタルシフト

リモートワーク(テレワーク)は、在宅勤務でなければ、社外で仕事をすることでもありません。リモート環境をオフィスと同じ環境にするにするだけであれば、それは職場の劣化版であるだけです。

仕事をデジタル化させつつ、リモートならではの働き方を模索することが大切です。オフィスでないことの制約を考えるのではなく、オフィスでないことへの創造こそがリモートワークを考える上での本質です。

チャンスにできる組織が勝つ

ピンチはチャンスという言葉がありますが、新型コロナウイルスをきっかけに始まったリモートワークは、働き方の質を高める最大の好機です。

管理職にとって、過去にない新たなマネジメントスタイルを想起できるチャンスであり、これを活かさない手はありません。

マネージャーに求められるのはアウトプット

性善説か性悪説か・・・どっちでもいい

リモートワークの懸念材料には、直接見る事ができない不安から生じる「あいつサボっている」があります。カルチャーによって性善説にたつのか、性悪説にたつかは議論が分かれるところでしょう。

しかし、そのような考え方はどうでもいいです。最善を尽くしているかどうかをメジャラブルにすることはずっと監視するほかに術がなく、そんなマネジメントは面白くありません。(測れないのであれば性善説にたったほうが気分が良いまである)

今一番大事なのは、最善をつくしたと思えるようなアウトプットできる環境を整える事であり、サボりについて考察する意味は全くないと言えます。

マネージャーの仕事はアウトプット

マネージャーの最も重要な責任は、部下から最高の業績を引き出すことであり、コロナ禍で業績を引き出すコツは、アウトプット化です。

マネージャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプットであることを忘れてはいけません。(HIGH OUTPUT MANAGEMENTより)

チームのパフォーマンス向上とアウトプットを強く意識することが、リモートワークマネジメント最大の要点です。

アウトプットを意識させろ!フィードバックしろ

マネージャーは、アウトプットを部下に求め続け(嫌がられようとも)、アウトプットの機会を創造すべきです。

目指すべきリモートワーク風土は自立と自律であり、部下にアウトプットするセルフマネジメントを執拗に願い、アウトプットに対するフィードバックを行いましょう。

▶フィードバックの正しい方法はこちら

アウトプットマネジメントの要点

アウトプットの場の提供に集中する

コロナ禍に限らず、部下の才能を開発していくにはアウトプット以外ありえません。事業や直接利益貢献に繋がらなくても良いので、勉強結果やアイデアを披露する場を設けましょう。

業績への直接貢献のアウトプットにだけ場がとどまると、それ以外の行為が非効率に思われてしまい、組織の多様性や客観性が失われていきます。

ダイナミックスキル理論にもあるように、多様な知的ネットワークを重んじる事が個々人の成長に繋がります。

ダイナミックスキル理論(ダイナミックネットワーク理論)とは

  • 能力がどのようなプロセスで成長していくのかに対する解
  • 能力は網の目状の知的ネットワークを形成していくことで開発されていく
  • →1つの領域だけではなく様々な知見が結びつくことで成長する
  • 言語化・アウトプット化される場面に到達すると安定して能力発揮できるようになる
  • 参考:成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法

アウトプットの姿勢に着目する

まず賞賛すべき

部下のアウトプットに対しては、まず賞賛から入るべきです。意見する姿勢を褒めなければ、意見そのものが出なくなります。さらに「あんな意見でも褒められるならおれはもっと褒められる。」というアウトプットスパイラルも起こりやすくなります。

適正でない意見に対する助言(ダメ出しなどの是正)は問題ありません。指摘がなければ何が正しいかがわからないま意見を言い合う組織になってしまいます。

ただし、アウトプットの質を高める工夫は後回し。まずはアウトプットの場をつくりあげていくことが大切です。

長所を活かしたアウトプットを促せ

メンバー全員画一的なアウトプットを出させる必要はありません。マネジメンターは、個々人のもっている長所や好きなことに着目することで、アウトプットを促進させやすくすべきです。

良い意見を出せ!の一点ばりでは、メンバーの長所の発見も遅れ、長所を活かす思考機会も失われていきます。アウトプット化がうまくいかないメンバーには、まず長所を発見してあげる工程を踏みアドバイスしましょう。

発言の可視化と共有

組織や事業へのポジティブな発言は、積極的に可視化していきましょう。アウトプットを見える化することで、組織も人も成長を実感しやすくなります。

アウトプットの可視化にはひと手間かかりますが、「自己有能性(仕事を通じて自分の効力を実感)」「自己決定性(自分で考え発言した)」「社会的承認性(職場や上司に理解され認められる)」などの動機付け要因からみても、やらない理由がありません。

エナチャイズできる上司を目指そう

ジャックウェルチ「ウィニング 勝利の経営」では、リーダーに必要なのは『4つのEと1つのP』であるとしています。

  • Energy:ポジティブなエネルギー、行動するちから
  • Energize:エネルギーを周りの人に吹き込む能力
  • Edge:決断力
  • Execute:実行能力
  • Passion:情熱

個人的には「energize」の概念がすごく好きで、コロナ禍で空気が重くなりがち&リモートワークで雰囲気がつくり辛い状況下のなか、最も求められるリーダースキルだと思います。

リモートワークで大事なのはアウトプットマネジメントであり、アウトプットを活性化させるためにエナチャイズな上司を目指すことで、より強い組織を作ることができます。

リモートワークでのマネジメントまとめ

マネージャーは、自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプットの意識に集中することを意識してください。

アウトプットアウトプットアウトプット、フィードバックフィードバックフィードバック。

リモートワークのメリットを理解しつつ、成長がしにくいこととクリエイティブな発想が生まれにくいことを念頭に、新たなマネジメントを確立させましょう。

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