面接官の心得5ヶ条と面接の流れ
面接される側のノウハウはたくさん出されているのに、面接官のナレッジはなぜか普及していません。採用は、企業が大きくなるのに最重要な活動であり、ノウハウは必須です。
本記事では、採用を成功させるための面接官の心構えや面接の流れ、コツについ徹底解説しています。
面接官が力をつけることで、採用率が上がり、内定辞退も防ぎやすくなります。優秀な人物を採用し、事業を成長に導くために面接力を高めましょう。
面接は判定と動機づけの場
面接はお互いを見極める場
面接は、合否判定と入社後の意欲を高める機会です。採用基準をもってのぞみ、基準を超える人材には活躍する姿を描いてもらい、内定辞退を防ぎます。
面接は求職者を選ぶ場であるとともに、求職者に企業が選ばれる場でもあります。面接官は、会社の代表として求職者と接するという気持ちを持ち、恥ずかしくない対応を心がけましょう。
面接は入社意欲を高める場
面接は、求職者の気持ちを「興味を持ち応募した」から「入社したい」に進化させる場です。応募者にとって企業が魅力的になるストーリーを最大限伝え、魅了しましょう。
求職者は必要とする情報を提供することはもちろん、新たな気づきや達成感をもってもらうのが良い面接です。何より面接官自身が「自分の会社は良い会社」と自信をもって望むと、意欲を最大限高めることができます。
面接は面接官の力量で決まる
拡大する | 拡大する |
採用の成否を分けるのは、面接官の言動です。人材総合企業エンジャパンが750名を超える求職者に調査した結果、85%以上が面接官の印象で入社したいと思ったと答えています。
反対に、入社したくなくなる理由の多くが、面接官の態度や言動です。良い印象を与えることはもちろんですが、求職者の動機形成を促し入社意欲を高められるよう敬意を持って対応しましょう。
面接官の5つの心得
面接官の心構え
- 「スピート」と「おもてなし」の両輪
- アピアランス(外見)に気をつける
- 求人票を事前確認しておく
- 動機形成することが面接官の真骨頂
- 客観的な評価基準を持つ
1.スピードとおもてなしが入社率を高める
求職者は、一番最初に内定をもらった企業に入社する可能性が高いです。動機形成により意欲が高い状態にもっていっても、2日もたてば熱が覚めるため、早い段階で内定通知を出してグリップしましょう。
また、「特別扱い」にも思えるようなおもてなしを求職者全員に心がけるべきです。相手に合わせて面接時間の提示をしたり、満面の笑みで挨拶するなど、細かな配慮ができる面接官は優秀です。
- ▼おもてなしと逆!よくある面接官の悪態
-
- 1.あくび
2.居眠り
3.背もたれにもたれて座る
4.自分ばかり喋る
5.話を否定する
6.他者他社を悪く言う
7.質問に答えない
8.しかめっ面
9.目を合わせない
10.パソコンを操作する
求職者に敬意を払っていればどれも回避できる内容です。
- 1.あくび
3.アピアランス(外見)に気をつける
面接官は、求職者が入社前に出会える貴重な先輩社員です。会社の顔になるため、髪型を整え服装にも気を配ることは当然として、口臭などにも注意を払って面接に望みましょう。
不潔感やだらしなさを感じる外見だと、「この会社大丈夫?」と思われ入社意欲を失います。面接内容と同じくらい、面接官の印象で入社意欲が上下することは常に覚えておくべきです。
- ▼外見チェックリスト(タップで開閉)
-
- 【髪の毛】
・髪の毛の色は会社基準で適切か
・寝癖はついていないか
・フケが肩に落ちていないか
【顔と手】
・歯垢、食べかすは付いていないか
・鼻毛は出ていないか
・目やにが付着してないか
・爪は短く切りそろえているか
【服装】
・清潔な衣服を着用しているか
・体のサイズに合った衣服か
・インナーや下着が透けていないか
・靴は綺麗に磨かれているか
- 【髪の毛】
3.求人票は事前確認しておく
面接官は、求人票の確認は予め行っておきましょう。求職者は、求人をみて会社に面接に望むため、面接官の話と求人内容(Web媒体や紹介会社の求人票)が違うと不信感を抱きます。
業務内容や待遇はもちろん、教育方法やキャリアなどは齟齬が起きやすいので注意が必要です。求職者の履歴書と求人票、この2つは常に面接中にも見れるように用意するのもおすすめです。
4.客観的な評価基準をもつ
面接では、求職者の評価基準を事前に用意しておきましょう。採用基準にブレがあると、入社後に現場が混乱したり、面接官と入社部署とトラブルが発生します。
評価基準を、チェックリストのように見える化し、必要人物と事前確認していくのがおすすめです。評価基準があれば、面接での見極めも楽になります。
5.動機形成することが面接官の真骨頂
面接は入社意欲を高める場であり、動機形成する力量が面接官には求められます。求職者の合否判定するだけであればAIでもできる時代なので、動機形成トークを日々磨いて差別化しましょう。
求職者が求めていること、一緒に働いた後の幸せとおもってもらえる点をヒアリングで発掘して、ポイントに合わせたアトラクトトーク(動機形成)をするべきです。
面接の流れと進め方
フロー | 狙い・期待効果 | |
---|---|---|
1. | 自己紹介 | 感謝伝達と印象づくり |
2. | アイスブレイク | 話を聞ける環境作り |
3. | ヒアリング | 入社軸の見極め |
4. | 企業・事業説明 | 動機形成 |
5. | お互いの質疑応答 | 動機形成 |
6. | クロージング | 動機形成&安心感醸成 |
1.自己紹介
面接にきてくれたことの御礼、自分の事業部や役職、キャリアを伝えます。面接は相互理解の場であるという目的、時間はどれくらいかかるのか、何を聞きたいのかを伝えて、面接へ導入しましょう。
自己開示の返報性を用いて相互理解できる土台作りを行うことが重要です。面接官が自己開示することで、相手も同等のレベルで情報を開示しやすくなります。
自己紹介のトーク例
「本日〇〇さんの面接を担当します、〇〇部の〇〇です。(簡単な自己紹介)、本日は宜しくお願いします。」
「お時間は1時間、○○さんがどのようにお仕事を探され、どのようにキャリアを考えられているかお伺いできれば嬉しいです。また面接は相互理解の場ですので、当社や私のことも積極的にお伝えさせてください。」
面接では、横柄な態度にしないことはもちろんですが、いきなりフレンドリーになりすぎないように注意しましょう。まずは自己開示と相互理解の場作りに注力すべきです。
2.アイスブレイク
面接では、求職者がリラックスできてないことが基本です。緊張や構えを取り除けるよう、答えやすい質問やイエスをもらいやすいコミュニケーションをとりましょう。
大手人材系企業マイナビのキャリアサーチLabでは、緊張によって面接を苦手とする方は60%を超えます。
また、同企業の調査では志望度が上がったポイントも「話をしっかり聞いてくれた」「リラックスできる環境を整えてくれた」が1位2位であり、アイスブレイクは重要な面接プロセスだとわかります。
アイスブレイクのトーク例
「面接会場まで迷わず来られましたか?」
「オンライン面接の経験はありますか?」
「Web 会議ツールの設定でわかりづらいところはありませんでしたか?」
3.ヒアリング
4つの入社軸
- 【業務・仕事】
仕事内容、裁量、出世、専門性 - 【経営・企業】
理念、会社規模、事業内容、業界立ち位置 - 【給与・待遇】
給与、福利厚生、残業、休み、雇用形態 - 【働く人・風土】
年齢構成、男女比、社風、キャリアデザイン
ヒアリングは、入社軸を見極めるために行います。入社意欲を高めるためには「自分の考えを受け入れてもらえている」と感じてもらう必要があり、入社軸を深掘り、求職者の考えをもとにトークできるよう整えます。
人それぞれに入社軸があり、大きく4個細分化して16個に分かれます。いきなり難しい質問をするのではなく、簡易な質問から初めて、徐々に興味関心や入社軸を探しましょう。
入社軸が不透明な場合は、まず共通話題を見つけられるように切り替えるのがおすすめです。アイスブレイクに失敗している可能性があり、雰囲気を温めなおす仕切りが必要です。
ヒアリングのトーク例
「これまでの経歴を含めて自己紹介をお願いします。」
「職務経歴について教えてください。」
「具体的にどのような業務を担当されていたのでしょうか?」
「何かを軸に職探しをしてらっしゃいますか?」
「仕事をするうえでのやりがいは何ですか?」
「会社選びで重視していることを教えてください。」
とにかくヒアリングは、相手に答えてもらいやすい内容から始めましょう。また、家族構成や政治など面接で聞いてはいけないポイントがあるので、予め勉強しておきましょう。
4.企業・事業説明
ヒアリングによって相手のことが理解できたら、自社理解をしてもらうフェイズです。大きな話から、だんだんと自分ごと化したディティールの話にもっておくのがポイントです。
会社や理念などの大きい話をしてから、事業説明→実務という順番で話して、最後は自分から見た会社や事業について話します。
面接官から見た企業や事業を説明することは重要であり、情熱を伝えやすくなることはもちろん、求職者も働くイメージ湧き、動機づけポイントを再度深ぼる機会にもなります。
実務を説明する際の4つのポイント
レベル | 説明内容 |
---|---|
実務レベル | 広告をとってくる仕事 |
価値レベル | 良い会社を多くの会社に周知する仕事 |
目的レベル | 広告を通じて企業の成長を手伝う仕事 |
意義レベル | 個人と企業が最適にマッチングできる社会を作る仕事 |
会社や業務について説明をするときは、「なんのためにその仕事をしているのか」という目的や意義をセットで説明すると、求職者の志向と自社の特徴をリンクさせやすくなります。
日々行っている業務レベルと価値、目的を伝え、最終的に社会的意義まで唱えることができれば、どこかの段階で求職者が反応するポイントがあり、動機形成のポイントを見つけられます。
時系列で語って未来に着地させる
企業や配属予定の事業部を説明するときは、過去→現在→未来の順番で話しましょう。未来については面接官の体験談やビジョンなど、形式張らずに主観的に語れると良いです。
企業や事業の未来を話すことで求職者も、自分の将来像をイメージしやすくなります。求職者も企業も一緒に成長するような合意をとるためにも、最終的には「未来」まで会話を運びましょう。
5.お互いに質疑応答
求職者が何よりも恐れるのは「不透明さ」です。ネガティブな情報や待遇などをしっかり伝えても、不安を取り除けているとは限らないので質問タイムは必須です。
質疑応答では、求職者の立場になってキャリアを一緒に考えることが重要です。志望動機を満たせるのか、長所は活かせるのかなどを質疑応答の時間で解決できるようにしましょう。
相手の入社軸に合わせて深堀りをおこなえば、求職者が自ら企業で働く合理的理由をアピールできるようになり、高いモチベート=動機形成が完了します。
質疑応答のトーク例
「〇年後、どんな仕事をしていたいと思いますか?
「今後、高めたいと考えているスキルはありますか?」
「どのようなマネジメントが、あなたのベストパフォーマンスを引き出すと思いますか?」
5.クロージング
採用が弱い企業は、クロージングが弱い企業です。しっかりと求職者の心(ニーズ)を掴み、内定辞退にならないクロージングを行いましょう。
「過去退職した会社の離職理由を潰せているか」「相手の望みたい未来は叶いそうか」「会社のポジティブポイントが相手の要望と重なっているか」などを確認することがクロージングになります。
クロージングの要点は、入社後の姿を描いてもらっているかどうかです。会社でのキャリアをイメージしてもらうことで、前提を入社する・入社しないではなく、入社したあとの行動に変わっていきます。
面接終了時には、相手の記憶に残るくらいの「今日は面接に来てくれてありがとうございます」を伝えましょう。面接の始まりと終わりは、面接官=企業の印象を左右するので気を抜かないように注意すべきです。
面接の注意点!タブーとされる質問一覧
面接では、職業安定法によって聞いてはいけない求職者の個人情報が定められています。
- ・家族、生育環境など本人に責任がない情報
- →「ご両親はまだ働いておられるのですか」「片親に育てられたのですか」
- ・政治、宗教、新聞など思想の自由に反する情報
- →「支持する政党はどちらですか」「購読している新聞は何ですか」
- ・セクシャルハラスメントにつながる情報
- →「結婚しても仕事は続けますか」「男友達は多い方ですか」
- 採用選考時に配慮すべき事項|厚生労働省
職業安定法に触れると行政指導や改善命令の対象になり、応じない場合は罰金刑が課されることもあります。
社会的差別の原因となるおそれのある質問、例えば人種、民族、出生地もヒアリングNG項目です。
SNSが普及して、企業情報が拡散されやすいことからも、面接でしてはいけない質問は必ず覚えておきましょう。
内定辞退を防ぐための対策
合格を出した後に辞退されるのは、あらゆる意味で損失です。内定辞退を防ぐ方法は3つあります。ただし面接でしっかり相手のニーズを満たし、不安を取り除き、動機形成できているかのほうが重要です。
接触頻度こそ至高
接触頻度は、内定辞退を防ぐために最も注目すべき数値です。ザイアンスの単純接触効果という心理学があり、「接触する頻度が多いほどに好感度が上がりやすい」という法則です。
メールや電話、内定後飯など、思いつく限りの接触頻度を取る方法を実行しましょう。採用通知を出すまでの費用や手間暇などを考えれば、内定辞退を防ぐために多少のコストを払うのは基本です。
社内ネットワーキングをつくる
ネットワーキングとは、内定者同士の「横の関係」と先輩社員との「縦」の人間関係をつくることを指します。内定者は、入社が決まった後でも不安があるため、解消しやすい場所をつくるイメージです。
すぐ連絡がとれるようなネットワークを、懇親会やツールを使って構築しましょう。社内にメンターを設定して、内定者と週1連絡を取るなどルール付けを行う会社もあるくらい、効果が立証されています。
伴走計画を伝える
伴走計画とは、内定者に対する育成計画であり、具体的に想像できる教育todoリストです。入社後3日間、1週間、1ヶ月、3ヶ月などの期間に切り分け、何をどう教えてもらえるのかを伝えましょう。
「接触頻度」「ネットワーキング」、そして「伴走計画」も求職者に対するラブコールです。心理学的にも好意の返報性を導きやすく、内定辞退の確率がどんどん下がっていきます。
まとめ:面接官は超重要
面接官は、採用を通して会社の生産性を高める、最強のプロフィットセンターです。採用を経営戦略の重要ポイントであることと理解し、トレーニングを積みましょう。
面接官ごとに、内定辞退率などを必ず数値で管理して、低い面接官=動機形成ができていないと判断して何度もロープレを行うべきです。
関連記事
雑談が上手くなる方法とコツ【上手い人と苦手なひとの意識の違い】
雑談が出来る人=コミュニケーション能力が高い人。そんな風になんとなく理解はできているけれど、上達に苦戦するかたが多いのも事実です。 そし…
辞書登録すべき30単語!業務効率を高める当たり前のこと
営業は、メールや日報、提案資料に至るまで、とにかく文字打つ量が多いです。こういった物理的な作業を短縮することができれば、生産性が圧倒的に…
おしゃべり下手の会話生成術【上司との飲み会】
お酒を飲めない僕が、それでも場を盛り上げられるように先輩に仕込まれてきたテクニックをいくつか紹介します。飲めなくても、飲み会ではソコソコ需…