チャレンジャーセールスモデルの要約まとめ
顧客との関係性が良いから売れるのではなく、顧客の価値を上げる提案が出来たことで関係性が向上します。顧客と良好な関係を築く営業が、成果を上げ続けるという考え方は迷信です。
営業と顧客の関係性は「成果の結果」で結びつくことで、中長期的な関係と売上が培われます。
ときに顧客にプレッシャーを与えられる「チャレンジャーセールス」こそ、最強の営業スタイルであり、組織全体が目指すべき顧客との向き合い方です。
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チャレンジャーセールスとは
マシュー・ディクソンが、4年間90社6000人にのぼる大規模・徹底調査をした結果を記した「チャレンジャー・セールス・モデル」。>
世界10か国でベストセラーとなった当書の中で、顧客関係性をもつ人々は5つのタイプに分類できることを示し、チャレンジャータイプの優位性をレポートしました。
- ハードワーカー(勤勉タイプ)
- リアクティブ・プロブレムソルバー(受動的な問題解決タイプ)
- ローンウルフ(一匹狼タイプ)
- チャレンジャー(論客タイプ)
- リレーションシップ・ビルダー(関係構築タイプ)
ハードワーカー(勤勉タイプ)
平均以上に努力し、行動量の担保を徹底するタイプ。学習は自発的であり、スキルアップに余念がない人材。
リアクティブ・プロブレムソルバー(受動的な問題解決タイプ)
細部にまで気を配れ、顧客のアフターフォローを最も重視するタイプ。社内社外問わず、関係者への対応が信頼でき、問題解決もマルチに行うことができる人材。
ローンウルフ(一匹狼タイプ)
自分の直観に従うタイプであり自信家。ルールやシステムを小馬鹿にする傾向が強く、組織のロールモデル化は難しい人材。
チャレンジャー(論客タイプ)
顧客のビジネスに深い理解を持ち、顧客の価値について洞察するタイプ。言われたことに縛られない視点を持ち、顧客や上司に物おじせず働きかける事ができる人材。
リレーションシップ・ビルダー(関係構築タイプ)
最大の献身性を持ってして対応を行い、顧客の組織に強力な賛同者をつくりだすタイプ。自分がどのような状況下であれ、他人を助けるのをいとわない人材。
組織成長の鍵はチャレンジャータイプ
チャレンジャータイプが最強
マシュー・ディクソンは、5つの営業タイプを一般的営業マンとトップセールスマンの2グループに分類して成果データをとり、どちらも60%以上の成績優秀者がチャレンジャーであることを明らかにしました。
顧客と関係を築いたり、圧倒的な行動量を誇る人材よりも、顧客の価値を最大化できる人材こそが求められるということが客観的に証明されています。
リレーションシップは弱い
一番成果を残せていなかったのは、リレーションシップ・ビルダー(関係構築タイプ)であり、関係性を一番に考える属性の営業マンです。
リレーションシップは短期的に強い生産性を出せる一方、価値にフォーカスしたやりとりが薄く顧客の課題解決に迫れないため、売上が最大化し辛くなります。チャレンジャーとの違いも明確です。
- ・チャレンジャーは顧客を安全地帯から引っ張り出す。関係構築タイプはお互いの安全地帯を確保しようとする
- ・チャレンジャーは顧客の価値を重んじる。関係構築タイプは顧客の利便性を重んじる
- ・チャレンジャーは目標以上のことを追求する。関係構築対応は顧客の目標以下に標準があってしまっている
また、リレーションシップビルディングは属人性によるものが大きく、他者が真似しにくいことも弱点です。
購買行動は変化している
営業組織の改善に特化したR-Square&Company社の著書「世界最先端の営業組織の作り方」では、顧客が売り手に何を望むかを調べ、顧客が最も重視するのは「営業体験」であるとリサーチしています。
購買チャネルが多様化し、商品であふれる昨今、顧客の購買行動はなにかを「買いたい」のではなく、なにか「特別な体験をしたい」に大きく変化しています。
チャレンジャーには誰でもなれる。目指そう
チャレンジャーモデルは、他のタイプよりも汎用化させやすいため、組織の中に「チャレンジャー」のノウハウを根づかせることで効率的に営業成績を向上させられます。
もともとのタイプが「チャレンジャー」でなくても問題ありません。正しい理論と実践法を身につければ、誰しも「チャレンジャー」として活躍することが可能です。
チャレンジャーではないハイパフォーマーは存在します。しかし、それは1流までタイプを突き詰められる才ある人材です。組織全体の生産性向上を狙うのであれば、全員チャレンジャーを目指しましょう。
チャレンジャーの3つのスキル
チャレンジャーの能力は、「指導」「適応」「支配」の3つに大別できます。チャレンジャーセールスは、これら3つのスキルを選り好みせず、すべてのスキルを磨くことで完成します。
チャレンジャーをほかの営業と差別化する最大の要因となるのは「指導」です。チャレンジャーは、顧客が市場で戦うための知見を教え授けることができるという点が、ほかの営業と決定的に異なります。
指導:教え導く
基本的な営業は、顧客にヒアリングを行いニーズを引き出しますが、チャレンジャーは引き出すだけでは終わりません。顧客のビジネスを理解した上で独自の意見を加えて述べ、新たな視点を見せることで顧客が気づかないニーズを「教える」ことを大事にします。
顧客に対して求めるものは「同意」ではなく「内省」であり、理想的な教師のような存在であるべきです。
適応:共感と賛同を得る
成果を上げるうえで、意思決定者の同意は必要不可欠です。そして、意思決定者に影響をあたえる者からの賛同を得るための動きが「適応」です。
顧客の社内のコンセンサスを取るための動き方を常に考え、意思決定者への共感を得る方法を試案尽くしましょう。意思決定に関わる人はリスクを回避するために、社内からの賛同も気になるので、それらを考慮した行動が必要です。
顧客の価値向上要因を考えつくし指導を心掛ければ、相手の言いなりにならない意見を伝えられ、顧客先の担当や意思決定者の共感を得ることができます。
支配:主導権とお金を握る
支配するのは、お金と主導権のことであり、攻撃的になることではありません。価値に基づき話をしているため、チャレンジャーはお金の話をいとわず、顧客に「無理強い」をすることができます。
緊張関係を嫌う関係構築タイプが苦手とする行動ですが、相手に指導ができているのであれば、それだけで価値があるはずであり憶する必要はありません。
語り口は大胆に、曖昧さを一切なくし前向きな緊張感をもって主導権を支配します。顧客が値引きを要請しても、提案の「価値」にすかさず話を戻し、顧客が何を達成したいのかを再度確認し、主導権を顧客に譲ってはいけません。
指導に必要な5つのステップ
チャレンジャーが他のタイプと一番違うのは、独自の視点で顧客のビジネスを差別化出来る新しい情報や視点を、熱意をもって伝えられる点です。顧客に価値情報を得させてから事業課題を認識してもらうと、商談に繋がる確率がグンと上がります。
そして、重要なのはいきなり自社サービスの話をせず、5つの流れにそって指導を進める事です。
1.教師の証明
他社の事例などから顧客のニーズの仮説を立ててぶつけましょう。「あなたのビジネスも競合も市場も私は熟知してます、安心してください」と意思表示することで、下手な自己紹介よりもよほど信頼を築けます。
顧客のニーズを聞くことが先ではなく、あくまで自身の知見から顧客ニーズに仮説を立てたトークで進行することで、指導しやすい下地をつくります。
2.再構成
最も大事なプロセスです。顧客にとって価値ある視点や意見をぶつけて、惹きつけましょう。
顧客が自分でも気づいていない問題をみつけ意見することで、顧客の価値観を再構成します。
3.裏付けと揺さぶり
主張した意見が、顧客のビジネスに重要な課題である証拠を見せましょう。 顧客がことの重要さに混乱するくらいの情報が大事です。他社事例や自社実績、業界トレンドなどを学びに学んだ量が、裏付けの質に直結します。
他社で同様な事態に陥ったことなどを、自身の知見を持って説明、他人事ではないと顧客に自覚させます。顧客に当事者意識を持たせ、「うちもそうだ」を言っていただければ100点です。
4.解決後イメージの創造
顧客が行動を変えれば、どのようにビジネスが改善されるのかを語ってもらいましょう。問題点を解決することで得られるメリットや効果に集中して質問を行うと、顧客の意識を解決策に向けさせることができます。
実際に解決行動をとったあとのイメージを想起させることが重要です。解決質問は、問題を解決しようとポジティブな雰囲気を作る効果があり、顧客は積極的で前向きな気分になります。
5.ソリューションの提案
最後の段階で、ようやく自社サービスがいかに顧客にメリットをもたらすかを説明します。
4解決後のイメージ想像プロセスを踏んでいれば、顧客が前を向いている状態であり、行動に移行してくれやすくなっています。
指導5ステップの流れまとめ
顧客のビジネスや市場をわかっていることを伝えて「教師の証明」をする。つぎに、顧客が気づけていない新たな視点を提示し価値観を「再構成」する。
再構成した価値観を「裏づけ」することで顧客の動機が育つ。顧客の心を揺さぶったら「解決後イメージの創造」。ここでもまだ自社の話はせず、あくまでも顧客の口から解決後の理想的な未来を語ってもらうことに終始する。
顧客が解決について積極的、行動的になったら「ソリューションの提示」を行う。
チャレンジャーの育て方
チャレンジャーを根付かせるためには、「指導」「適応」「支配」の3つのスキルを、訪問前と訪問後の2段階にわけたうえで質問形式で行うと効果的です。
また、チャレンジャーは3つのスキルが融合することで強みを発揮するため、即修得はできません。普段から議論させることをこころがけるなど、継続的なコーチングが必要です。
指導の教育
訪問前:今日の目的は何なのか、顧客の抱えている課題のどの部分に焦点を当てて話すのか、なぜ重要だとおもったのかをヒアリング。上司の知見からすると、部下の考えで相手がどれほど興味を持つかをフィードバックする。
訪問後:部下の知見に相手は興味を持ったのか、どのくらい興味を持ったのか、またなぜ持ったと思うのかをヒアリング。心を揺さぶるような価値提案や他社事例の話をできたか、目的に対して何点だったのかをフィードバックする。
最重要なのは「質問して確認すること」
- ・訪問前にはどんな目的で行くのか、訪問後にはその結果を報告する行為が一番大事。
- ・不明瞭を許すな。いつでも顧客についての目的意識を持つことを何度も刷り込め。
- ・何故訪問するのかという目的を誰しも理解できるように言語化する作業が目的志向と仮説思考を生む。
- ・事例や実績も必ず確認せよ。大事なのはツールよりも、顧客価値に基づいたうえでの選定なのか。
- ・事例を全部頭にいれてない人材が多すぎる。だからこそ何度も確認して刷り込め。
チャレンジャーセールスを育てるうえで重要なのは、指導項目への質問と確認です。教育者は、まず質問しまくることで育成を試みましょう。
適応の教育
訪問前:会う人や決裁者の了承を得るためにはなにが必要かをヒアリング。上司は自身の体験から、担当者以外の決裁ネットワークと何が決め手になるかをフィードバックする。
訪問後:顧客の経済圏の中心(売上や利益、費用の増減にかかわる要員)について何を把握したのか、顧客の目標が自社サービスと一致したかをヒアリング。顧客に共感を得れていたか、決裁者に届くアプローチを行っていたかをフィードバック。
支配の教育
訪問前:意思決定まで決済プロセスを進めるためのネクストアクションは何か、期日ややるべきことを理解しているかをヒアリング。クロージングにこだわることを伝達。
訪問後:事前準備は役にたったのか、他の顧客に活かせるか、提案につながる発言ができていたかをヒアリング。顧客が価値提案に満足していたか、ピントが外れていなかったか、期日とKPIをフィードバック。
顧客に意見する勇気が出ないのは準備不足
顧客に意見する勇気がないという人に限って、事前準備が疎かになっています。
「仮説をたてまくり潜在ニーズを想定する」→「問題質問を3つ書き出す」→「顧客の懸念解決」→「メリット提示」をイメージして要約し書き留めましょう。
顧客と会う前に、必ずこの事前準備の運用を繰り返すべきです。事前準備をしないで勇気がでないなんて滑稽な話。上司は事前準備に対しても厳しいチェックを行うことを推奨します。
常に意識させること
「自社の強みや実績の話ができる」「顧客の仮説を覆す」「顧客の行動を促す」「他の顧客への拡張性」これらを意識させることで、全てが商談になるような会話に導きやすくなります。
「そのとおりです!仰るとおりです!」と言われている段階では、相手のニーズを当てただけで商談には直接結びつきません。
また、他顧客への拡張性を意識させることで、提案がいち顧客のみならず他の企業にも当てはまるような状態にさせ、組織全体のナレッジを連続的にストックできるようになります。
チャレンジャーセールスのまとめ
- 顧客の価値に基づいて提案するチャレンジャーが最強
- 誰でもチャレンジャーになれる
- 指導の5ステップを中心に中長期的に習得を目指せばよい
チャレンジャーセールスを習得するうえで、まず抑えるべきは「チャレンジャーセールス」こそ最強であり、顧客もそれを望んでいるということです。
顧客も自分自身も安全地帯におくのではなく、物怖じせず価値ある意見を言える人材に成長しましょう。
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