麻雀同好会というものが職場に存在していました。
ほとんど麻雀はしなくなっていましたが、ただの飲み会としての同好会はずっと開催されていました。男性が10数人、女性が私1人。
麻雀というかわいくない趣味を持つ女性など社内にいなかったのです。
飲み会で紅一点。聞こえはいいですが、女の子扱いされるわけでもないのでオイシイ思いなどしたことはありません。
男どもに混じって、たまに酒を飲んで語らう……そんな感じでした。
ある日、同好会に女子が入会してきたのです。
一つ下の、T子ちゃんという目のパッチリした美人さんでした。別のフロアに勤務する、まったく関連のない部署の子でしたが、彼女は美人なのでみんな知っていました。
彼女は麻雀など一切できなかった。でもいつのまにか仲良くなっていました。
うまく仲間に入れる子っているでしょう? 彼女がそんな感じでした。
ニコニコと愛想がよく、とくに女子の同好会先輩である私に非常に愛想がよかった。頬が紅潮していて、瞳うるうる。血統書つきの子犬のようなかわいさ。私を立ててくれ、分け隔てなく男性と仲良くする姿はほほえましかった。
──あれ? T子ちゃんは、そのうち私をすっ飛ばして飲み会に参加するようになりました。
いつも「一緒に行きませんか?」と私が行くかどうかを確認してから参加していたのに。
そう。いつの間にか彼女は会に溶け込み、マスコットガールになっていたのです。マスコットになった彼女は私に目もくれませんでした。
変だな? いつも私の周りでじゃれついていた子犬ちゃんじゃない……。男どもはT子ちゃんにデレデレし、私は会の「お局」に。
なぜ?
彼女は嗅覚が鋭く、以前から「あの会ってなんなんだろう」と思っていたのだとか。「あの会、男ばっかと思ってたら女いるよね? え? ひとり? なんで? 麻雀? へー! あの女の人誰? あの人麻雀できるの? いまはやってない? なにそれ、じゃああの人、ひとり勝ちジャン。女ひとりでズルーイ!」
という発言をしていたようです。
なるほど。でも追い出すほどのことでもありません。私が会に出ていないうちに、彼女、会員の男たちとデートを始めました。
同好会はT子争奪戦のはてに、みごと空中分解しました。出し抜きたい&子犬と交際宣言したい男と、できるだけ気づかれず、一番よさそうな男を吟味している女の攻防。
そうかサークルクラッシャーだったんだ。
かなり男性たちは険悪になったようでした。まあ、そういうところはなんだか女よりも面倒。
いやな面も見ましたね。私にライバルの悪口を言ってくる男もいたのですから。
昨日の友は今日の敵かよ。蚊帳の外の私は苦笑するしかなかったです。
サークルをクラッシュするのは地味な子、サークル内でしか勝負できないレベル女子という定義があるようですが、T子ちゃんは美人。しかも同じ会に元からいる女子(つまり私)を追い出す格上クラッシャーでした。
彼女は、ほとんどの男たちといい仲になってクラッシュさせたあと、ちゃっかり社外の男と婚約。
そのときの男どもの顔と言ったら。
おめがねにかなう男がいなかったことと、思いのほか食い散らかしてしまったので、別の場所にいる男を選んだのでしょう。
職場におけるサークルクラッシャーが、格上(他の女性を蹴落とす)なのは、「結婚」や「婚約」にボヤボヤできない年齢だからなんでしょうか。
でも、T子ちゃんのような生き方もある意味賢いと思います。
その後は同好会はなんとなーくまた、はじまりましたとさ。単純。
「ひどい女だったな」って笑いながら。男ってそれで終わるんだなぁ。これが女同士ならギクシャクしたまま。いいな、幸せで。なんだか羨ましい。
すこしずつ間違えてゆく計算の誤差ひろがりてわれの人生(ひとよ)は
※ 松平盟子『プラチナ・ブルース』 (砂子屋書房) 1990
わたし、間違えちゃったかもしれないけど、それ以外に世界を持っていればやりなおせる。っていうか、そっちの世界で生きていけばいい話じゃない? ひとつしか生きる場所を持ってないなんて、逆に損だよ?
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