恋をしたら誰もが「今、彼は何しているのかな?」とヤキモキし、「LINE既読になったのに、なかなか返事がないのはどうしてなんだろう?」と不安になることもあります。時には、連絡がこないがために「もしかしたら、他の女の子と会ってるのかも?」なんてネガティブ妄想が膨らんで、よく眠れずに過ごしてしまったという経験もあるかもしれません。
でも、コレ、一体どこまでがフツーの恋愛で起こる感情で、どこからが恋愛依存なんでしょう? 「ここ!」という明確なラインがないため、気づいたらズブズブの恋愛依存だった……なんてこともあるかもしれません。
恋愛体質とは逆ベクトルの恋愛依存
恋愛体質と恋愛依存、これは心理士や医師によって考え方が違い、同じだと言う人もいますが、私は分けて考えています。恋愛体質の延長線上に恋愛依存があるのではなく、まったく別のところにあるというのが私の見立て。
相手の行動に対して疑心暗鬼になり、メールを無断でチェックするなど止めたほうがいいことなのに止められない。そんな苦しい状況の延長線上に、恋愛依存があると考えています。
つまり、「別れても次があるから大丈夫」とすぐに古い恋を手放し、新しい恋に走り出す恋愛体質の女性とは真逆のベクトルなんですね。
……というわけで。あなたはすごくひどいことをされても、自分の中に芽生えたイヤな感情や、彼がしてくる悪いことにきちんと目を向けられますか? 見ないようにしちゃう。あっても忘れちゃう。なかったことにしちゃう、いいところばかり思い出そうと必死になる……そんな経験がある方は要注意。
別れたほうが楽になる、どこかでそう分かっているのに、人に借金してでも彼に貢いでしまう、お金を貸すことで関係をどうにか維持しようとしている、高いプレゼントを買ってあげることで気をひく……なんてことをしたことがある方は、しっかり読んでくださいね。
彼氏以外、何も見えない!それはもはやイエローゾーン
ここである女性を紹介しましょう。その人はM子さん。現在31歳で独身。3年つき合った彼氏がいます。彼氏とは20代後半のときに知り合い、向こうから「好きだ、今の彼氏と別れて俺とつき合ってほしい」と、強く押されてつき合いはじめました。
当時、4年ほどつき合った彼氏がいたのですが、彼はバツイチで16歳も年上。別れた元妻のもとには子どもも一人いました。結婚したいと思っているM子さんに対して、彼は「うーん、結婚はなあ……」とはぐらかす上、両親にも紹介しにくい。そんな風に思っていたところに、「結婚したらこんな生活がしたいね」と結婚をちらつかせながら迫ってきた新しい男性は、乗り換えるのにうってつけでした。
ところが、その彼氏は非常に時間にルーズ。待ち合わせ場所に「あとちょっとで着くから」と言いつつ、1時間経っても現れないということがざらにありました。こういう場合、「じゃ、近くのカフェに移動して待ってるね」とか「適当にショッピングをしているから、つきそうになったら連絡してよ」などと言い、何か別のことをしながら待つのが普通です。そして、ようやく彼氏が現れたら、「どれだけ遅刻したと思ってるの! お詫びに何か奢ってよ」なんて怒って、ちゃっかり欲しかったものを買ってもらう……なんてこともしちゃうでしょう。
ところが、M子さんの場合、待ち合わせ場所がハチ公前ならハチ公前で、ただじーっと待っているのです。そして、彼氏が来たならば、「ゴメンゴメン」と口先だけで謝る姿に、「あ、ウウン。いいよ。いいよ」なんて笑顔で答えるだけでなく、「もう、こないかと思っちゃった」と不安そうに言うのです。
これはもう彼氏だけで頭が支配されている状態。彼氏の言ったことがすべてという思い込みによって、臨機応変に動けなくなってしまっているんです。つまり、すでに認知(考え方)が偏り、「じゃ、●●して待ってるね」と自分から提案する柔軟性を失ってしまっているのです。
今の時代、スマホがあるのだからいくらでも連絡の取りようがあります。でも、自分がその場を動いてしまうと彼は来ないかもしれないという不安を抱いているため、「見捨てられたくない」「嫌われたくない」と自分の意見を言えなくなってしまっているんですね。
よく考えたら、こんなに時間にルーズな彼氏はイヤだと思いませんか? 自分のことを大切にしてくれていないと感じてしまいますよね。人によっては、あまりにも遅刻が続くようなら別れる! とまで言う人もいるでしょう。でも、恋愛依存に陥っていると、「私にはこの人しかいない」と思い込んでいるため、他の人のことはまったく考えられません。例えば、道端ですれ違ったときなどに「あ、この人かっこいい」と思うことすらないのです。そのため、目の前の彼氏がどんなにひどいことをしていても、その人にすがってしまったり、理不尽なことにも従ってしまったりするのです。
さらには、依存に陥っていると、嘘をついてまわりの人に迷惑をかけたり、アドバイスをくれる友達との関係を切ってしまったりしていることも多いため、「もう自分には彼氏しかいない」という状況を自ら作り出していることも少なくありません。また、今つき合っている彼氏と別れたからといって、恋愛依存が解消するとも限らないのです。それはまた次回詳しく解説していきましょう。
【山名裕子】
メンタルオフィス「やまなmental care office」代表臨床心理士。
大学にて心理療法の心得と技術を学び、2013年に臨床心理士の資格を取得する。主に認知行動療法によってカウンセリングをすすめ、心の専門家としてメディア出演をはじめ幅広く活動中。
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