新卒のみならず現在は中途市場においても人気の業界が総合商社だ。新卒では採用人数も業界として多いため毎年多くの人が商社に入社している。
しかし、商社の業務は多岐にわたり組織も大きく見えづらい部分が多い。今回は財閥系商社で勤務する現役商社マンに取材をおこなった。
給料、業務内容、女性の活躍となかなか聞きづらいトピックを赤裸々に語っていただいた。給与や具体的勤務内容をぜひご覧いただきたい。
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- キャリハイ@編集部
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目次
30代で総合商社の関連会社でマネジメントをしたくて商社へ
–経歴を教えてください。
都内の大学の文系学部を卒業後、財閥系総合商社に入社しました。体育会でもなく飲みサーでもなく比較的まじめな大学生でした。
海外留学はアジア圏に1年間留学経験があります。現在は総合商社のコーポレート部門所属の5年目の若手にあたります。
–総合商社を志望した理由を教えてください。
将来的なキャリアとして30代で経営にかかわるマネジメントをしたいと考えていました。
総合商社は関係会社等たくさんの会社に投資しているので、役職付きで比較的若いうちからマネジメント層として事業に関わることができるのではないかと調べるうちに思いはじめました。
役職付きで若いうちからマネジメントができるという点を満たすという点を考えるとベンチャー企業への就職もしくは自分で起業というのが選択肢として浮かぶかと思います。
しかし、私は自分でこれがやりたいという具体的なものがありませんでした。また起業をする勇気がなかったというのもあります。
他の志望理由としてお金もありました。
–お金とは具体的にどういうことでしょうか?
奨学金をかなり借りていたのと、学費も親戚から借りていたので早いうちにと返済しようと考えていました。
加えて、単純な話ですが1000万円プレイヤーになりたかったですね。
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学部卒4年目で年収1,000万円を超える
–すでに1000万円プレイヤーですよね?
そうですね。学部卒だと残業代の付け方によって違いますが4年目とか5年目には1000万円にいきますね。
ただ、残業の付け方によって異なるので部署がどこになるかで大きく年収は変わります。私は月100時間以上残業を申請していたこともあるのでそのときは給与のほとんどを残業代が占めていました。
–部署によって異なるとはどういうことでしょうか?忙しさが異なるということですか。
忙しさの問題ではなく、残業をつけていい部署とそうでない部署に分かれるということですね。
もちろん残業を減らそうという方針自体は全社的にあるのですが、部署によって残業申請時間にMAXがあると思うとよいでしょう。
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残業代の申請は個人の達成すべき利益によって左右される
–残業代つけることができる部署とそうでない部署にはどのような違いがあるのでしょうか?
申請できる残業代については部署の利益に依存します。
私が働く総合商社では個人またはチームで達成すべき定量目標として売り上げや利益が定められる部署があります。
各期首に定められたターゲットを達成するためにコスト過多、つまり残業代がかかりすぎてはターゲットを達成できないことになります。
達成すべき利益と予想される売上から逆算して残業をどこまでしていいかどうかが決められると思われる部署もあったのです。
–飲み会は総合商社はしんどそうですね。
お客さんとの飲み会は当然ながらしんどいです。特に伝統的な業界だときついです。重厚長大な分野の物流関係の部署の飲み会がお客さんもそういった傾向が伝統的に好きな業界です。
お客さんとの飲み会では経費できることができますので金銭的な負担は大きくありませんが。
社内の飲み会でも飲みが激しい部署は大変です。社内の飲み会でも営業関連の部署だと飲み代の補助がでていたところもあるようですが、最近はそういった補助も縮小傾向です。
借金400万円を抱える人も
–飲み会で借金を抱えている人もいるのですか?
飲みだけではないですが、私生活で派手に使ってカードローンでお金を借りる人もいますよ。2年目のときに借金が400万円まで膨らんでいた同期もいました。
営業とコーポレート部門の間の部署に配属
–これまでいた部署を教えてください。
コーポレート部門と営業の間くらいの部署にいました。その後はコーポレート部門にいます。
やってきた仕事の1つは事業を推進するにあたって営業がわからない会計、税務関連のサポートです。
商社によっては営業部にこのようなサポート部署がありますが、コーポレート部門にあることで、監視的な役割が働き営業部門が暴走するのを止めることができます。
また、同時に営業とコーポレート利害が一致しないことがあるので間にたって調整をします。上記の仕事とは別に連結決算の開示に係る仕事もしてきました。
–営業にサポートは必要なのでしょうか?
営業はお客さんと日々折衝をしているので社内のルールをいちいち調べていると時間がかかります。
承認をとるにもルールがありますし。コーポレート側が定めているルールは必ず意味があって設定されていますが、わかりづらいものが多いのは事実です。
仕事を進めるにあたってルールを無視してはいけないのでスムーズに営業部門の人が仕事をできるようにサポートする必要はあります。
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白酒を昼から飲むのが仕事の人も…
–めんどくさいルールとは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
営業部門からするとめんどくさいかもしれませんが、会社組織全体を見ると必要なものだと思います。
例えば、事業投資の話ですが株式を保有することになる投資に関してはどれくらい収益が見込めそうかに関しての指標があります。
良く知られているところだとIRR,NPVと指標があり、各指標を計算し資料に落とし込まないといけないです。
営業部門で投資の担当でも物流事業に長く関わっているものの、投資関連の経験がない状態で新規投資にかかわることになった際にこういった収益の指標に慣れていない人がいます。
また、縦割りな組織であるため、部門横断での知見共有等も狙ってこう言った組織があります。
営業部門の中にはお酒を飲むのが重要な仕事の人がいます。例えば中国で仕事をするときに現地の企業と取引をするのには中国に出張をする間はずっと昼から白酒を飲む必要があります。
もちろん、こういった仕事をしている人たちはお酒を飲んで関係を築くのが仕事ですから資料を作ることに労力を割けません。出張レポートに白酒20杯飲んだとか書けませんからね。
–白酒を昼から飲む仕事は大変ですね。彼らは配属前からこういった仕事だと理解して入っているのでしょうか?
分からないですが入ってから知る事になったでしょうね(笑)。中国の伝統的な産業と対峙するにはお酒は必須なので、中国語が話せるのと同じくらい重要なスキルですね。
–現在の部署は希望していた部署でしたか?
第三志望まで書いた記憶がありますが全く志望に入っていない部署に配属されましたね。
先に述べたように部署でいうと30代で商社が保有する事業会社に行きたかったので投資をしている事業部に行きたかったです。
金融部門や新規産業部門、あとは関連会社をたくさんもっている化学系の部署あたりを志望していました。新規産業といってもすでに成熟したベンチャー企業への投資です。
志望部門はそもそも新卒が入れなかった
–なぜ志望した部署に入れなかったのでしょうか?
そもそも金融や新規産業部門には新卒が当時あまり配属されていなかった事情があります。
会社としては新卒で入った以上は会社の流儀を身に着けてほしいと考えているようです。
よって金融や新規産業の部署は中途採用の人たちを当てています。もちろん、数年経験を積んでから新卒採用でも異動となるケースはあります。
まぁ新規事業投資、特にこれまでの事業の延長線に無いような飛び地案件を総合商社がやるのは難しく苦戦していますがね。
–関連会社に出向できる部署とそうでない部署はあるのでしょうか?
ありますね。人を比較的積極的に送りこんでいるところだと金属、生活産業、自動車、機械関連の部署があたります。
たとえば、自動車産業であればメーカーの代理店事業をしたり、与信管理を行ったり、お金を貸したり、そのローンを回収するところまでやったりといった仕事を海外で行うことがあります。
輸出から現地の事業のサポート、事業保険まで一貫してサポートできるのでメーカーにとって総合商社がいる意味があります。
しかし、一部の部署は人を送りこんでいないですね。単純に株式出資の比率が低く経営権を握れていないため関わり方が経営参画というより監視役になってしまい人をわざわざ送りこむ必要がないからです。
ダメな人は片道切符出向すらない
–関連会社に送られる人は片道切符のイメージがありますが実際のところどうなのでしょうか?
コーポレートと営業で送られる役割も違いますし、送られるタイミングも違うので一概に言えません。
一般的に営業から関連会社に行く人はCEOとして、コーポレートから行く人はCFOとしていくことになります。若くして出向する場合の狙いは修行や引継ぎなどが目的になっていると思われます。
本当にダメな人を関連会社や出資先に送り込むことはしません。なぜなら送り込まれた側、つまり受け入れ側のモチベーションを下げてしまう可能性があるからです。
仕事もできないのに給料だけ高い人が急に偉いポジションで来たら嫌ですよね。本店から行く人は倫理観、道徳観がきちんとある人が必要です。
連結決算で出資先会社の実績もグループの決算や営業部の評価に影響を与えるので本店側も必死になるわけです。
1~4年目までの給料を具体的に大公開!!!
–気になる給料ですが、具体的に教えていただけますか?1000万円を超えるまでのペースを知りたいです。
あくまでイメージとして思ってください。業績によっても残業代によっても違いますし、ベースも年次によって違います。
下記は4年目で年収1000万円を達成した際のモデル給料だと思ってください。それまでは残業代が年収に大きく影響しますのであくまで参考値としてください。
年次 | 月給(ベース) | ボーナス |
1年目 | 18万円 | 60~70万円 |
2年目 | 30万円 | 100~160万円 |
3年目 | 33万円 | 160~200万円 |
4年目 | 36~37万円 | 200~240万円 |
月給は上記の金額に残業代がのっかってきます。繰り返しになりますが残業代次第で大きく年収が変わってくるので あえてここでは年収については触れません。
またベースも年によって変化することがあります。そしてボーナスは業績連動なので年によって異なります。もちろん部署によっても異なりますが。
–月給もボーナスも含めて残業代をのぞくと、意外と高くないなという印象です。以前お話を伺った方は残業代のおかげで2年目年収が800万円とおっしゃっていました。
4年目で見ても、36万円×12か月+200万円=632万円ですね。つまり残業代で稼ぐというモデルが確立されているというわけです。
広告代理店も同様ではないでしょうか。もし残業代がなくなれば決して秀でて給与が高い業界にはならないでしょう。4年目だと300万円強がこの給料にのっかってくるイメージです。
もちろん残業代が300万円行かない人もいるので5年目以降で年収1,000万円を超えることもあります。
詳しくはわかりませんが大学院卒の人は1,000万円にもう少し早くいっているときいています。
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ボーナスは部門ごとに違い、業績連動
–ボーナスについてはどのような扱いになるのでしょうか。もっと高いイメージをもっていました。
賞与、いわゆるボーナスについては営業は業績連動となっています。稼いだら稼いだ分だけボーナスとなってかえってきます。
さて、コーポレートは直接利益をあげていませんね。そのため平均という形で賞与が算出されます。
ボーナス時期に浮かれているのが商社のイメージでしょうが営業で稼ぎがよくなかった部門は差をつけられています。
コーポレートと営業の間の部署については、平均をとる計算手法と業績連動の計算手法のコングロマリットで賞与が算出されています。
–いわゆる働き方改革で残業を減らそうとする動きが来る気がします。働き方に関して効率化の波はきているのでしょうか?
確実に残業時間は減ってきていますね。
これまで必要とされていた業務が削られる動きが加速していました。
例えば、これまでは上への報告が非常に多かったのです。
出向先、本店、営業とそれぞれに報告する必要があって、それってそもそも必要なんだっけと立ち返ったときに必要な部署の必要な人にだけしたらいいということになって報告の量が減ったように思います。
–今でも仕事に関して無駄はあると感じますか?
1つの仕事に必要以上の人数を割いていますね。総合商社がどこもそうかはわかりませんが長期的に働くことが前提となっていますので時間をかけて育成をしています。
組織としてゆとりがある状態で全体が仕事をしています。
例えば私が今関わっている仕事は3人で対応していますが。実際に必要な人員は半分でいいと思います。
ただ、若手に仕事のチャンスをあたえて、もし若手が失敗したときは上がリカバリをうてる体制にしているように感じます。
昇進試験を受けない人も存在
–この話を聞くと若手に裁量権があるように感じます。
うーん、そうですねえ。裁量権はないわけではないです。
ただ、この仕組みも上司によるところがあるんです。
私が前に働いていた部署の上司は若手に裁量権を与えるタイプの上司ではありませんでした。
チャレンジをしてリスクを取るよりは、今ある仕事をマイクロマネジメントで確実に終わらせようとしていました。
–上司を見ていてどう感じましたか?
共感も納得も何もできなかったです。役職をあげるためには昇格試験があるのですが、そもそも昇格試験を受けないんですよ。海外にもいかないですし。
–昇進試験を受けないと給料があがらないのでは。
管理職の少し下のポジションまでは半自動的にいけます。そのポジションまでいくと給料が恐らく1000万円台中盤はもらえるはずなので悪くない給料はもらえます。
–管理職とはどのポジションですか?
課長ですね。15年目くらいに早ければようやく管理職になれます。
編集後記【前編】
今回は年収を中心にぶっちゃけ話を展開していただいた。4年目で年収1,000万円を超えるというのはかなり高いのではないだろうか。
戦略コンサルのアソシエイトとほとんど年収も変わらず、またアクセンチュア等の総合コンサルよりも年収1,000万円の達成スピードが早いように感じる。
総合商社からコンサルに転職したいと相談をうけるが確実に辞めたほうがよいと年収の観点からは痛感した。
転職サイトに登録すると総合商社マンにスカウトが多数くるものの、年収アップはおろか年収維持での転職が難しいことに気づかされる。
総合商社に行きたい方は、ハイクラスの求人が集まる「ビズリーチ」にぜひ登録してほしい。転職エージェント経由で、転職募集情報の連絡がくる。
また、高年収求人に特化して転職活動をしたいという人であればリクルートダイレクトスカウトも併用して利用しよう。
年収が上がるスピードよりも高年収でその後のキャリアも考えて、実力をつけたいとコンサル業界に転職したい人であればコンサル業界に特化したアクシスコンサルティングも併用すると良いだろう。
また、配属による不確定要素をどう避けるかが重要な気もする。後編を楽しみにしてほしい。
後編は下記から。
今日は以上だ。