外資系メーカーから日系メーカーの転職事情-「外資と日系ではマーケティングの考えに大きな隔たりがある」

※マイナビ、リクルートなど各社のプロモーションを含みます。
※この記事は有料職業紹介(許可番号:13-ユ-314522)の厚生労働大臣許可を受けている株式会社コレックが制作しています。

外資系メーカーと日系メーカーは度々比較されますが、両方での勤務経験を持つ方にマーケティングの考え方、組織の在り方の違いを含め語っていただきました。

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「史上最高のキャリア」を目指す方に役立つ情報提供を目指しています。外資系、メーカー、金融、メガベンチャー、スタートアップなど、様々なバックグラウンドを有するメンバーが参画しています。

外資系化粧品メーカーで5年勤務

-自己紹介をお願いします。

新卒で某外資系メーカーのマーケティング部門に入社しました。化粧品のマーケティングに5年ほど従事したあと日系の大手メーカーで3年ほど勤務してB to C 製品のマーケティングに従事しています。

-外資系から日系メーカーに転職しようと思った経緯は何でしょうか?

外資系から日系に転職しようと思って始めたというよりは、当時やっていた仕事があまり好きでなかったので別のことをやろうと思い始めたのが最初のきっかけです。

日系になぜしたかというと、adaptationではない仕事がしたかったからです。外資系だと携われる範囲が0から100というよりは、本部や海外で既にある程度存在しているものを日本に適合させるという感じの仕事も多いです。

もちろん全部がそういうわけではないですが、私が担当していたブランドは海外のプレゼンスが高かったため、日本はadaptationメインになっていました。

そこでヘッドクオーターでマーケティングができる、日系の大手グローバルメーカーへの転職を決断しました。

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20代のマネージャーが当たり前の外資系

-日系と外資系の違いについてもう少し詳しく伺っていきたいです。

私が在籍したのは、どちらも世界的に有名なメーカーですが、日系と外資というより会社間の違いもあるかもしれません。

転職先の日系メーカーは部署のせいもあったかもしれませんが、年齢が上の人が多いですね。外資のときは40代どころか30代すら少ない環境だったので、30歳前後の私はとびぬけて若く、40代はざらにいましたし、マネージャーも40代中盤の年代は多くいました。

20代でマネージャーが当たり前の環境だったので、そうした環境の違いには戸惑いました。パソコンもろくに使えないで1千万近くもらっている、英語だけできるおばちゃんも日系企業にはいました。

マーケティング部門なのに、完全にコミュ障のもてなさそうなおっさんも働いていて、異世界に迷い込んだ気がしました。

また、日系企業特有というよりは私の部署の特色だと思いますが、人材の流動性がないため、同じ人が同じ仕事をやり続けていて、自分たちのやり方に固執したガラパゴス状態で、外部の刺激が何もない状態です。

-ヘッドクオーターで働けることは良かったですか?

グローバルメーカーといえ、日本の売上が圧倒的だったので日本の発言権はかなり強かったです。日本だけ独立した組織だったので、他部署とフラットというよりも特権的な立場でしたね。

それでも日本国内ではシェアがずっと下がり続けていたので、本来であれば、あまり大きい態度はとれないはずですが、日本のことについては本来言うべきことも含めて、文句を言ってはいけない雰囲気でしたね。

優秀な人もいるのでしょうが、少なくとも私の周りでは、一部の若手以外は優秀さを感じることはありませんでした。

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「なんとなく」「雰囲気で」日系大手のマーケティング

-転職して気づいた外資系の良さはなんでしょうか?

先ほどもあげましたが、若いマネージャーがいることです。私が働いた日系メーカーだと若くて30後半ですので、単純に比較すると20代のマネージャーがいる外資系の方が若くして裁量権があります。

また、発言1つ1つのエビデンスとROIを、真剣に考えている印象が外資系メーカーの方が強いなと感じました。なぜこうなったのか、その理由やロジックを、人に説明しなくてはいけない気持ちを基本的には皆がもっています。

一方、転職先の日系メーカーはそのような意見を全員がもっているとは言えませんでした。空気で発言している人や、なんとなくの感覚で仕事をしている人が多かったです。世界的に有名なメーカーでもこれなのかと驚いた記憶がありますね。

外資系企業で働いていたときは、何かをするときにターゲットはこうで、ニーズがこうなっていて、という説明プロセスがありますが、目的を明確にして、数字とともに説明をしていました。

また、市場や自社ポートフォリオあるから、次のブランドや新製品はここの市場を狙って行こう、のような基本的ですが必須だと思える話があって、今振り返ると素晴らしかったなと思います。

日本企業に転職してから感じたのは、「なんか面白いことしてよ」「俺はかっこいいとは思わないんだよね」レベルでの会話が会議ででてくるので、まったくロジカルじゃないなと。

マーケティングはブリーフィングなど言語化するのが仕事の重要な部分であるにもかかわらず、言語化することを放棄している人があまりにも多い気がしました。

仮に言語化がなされていなく共有もできていなくても、偉い人がトップダウンでうまく進めて結果も出ているときはまだいいと思います。しかしそうでない場合には、何が良くて売れたのか、何が良くなくて売れてないのかが分からなくなってしまいます。

-マーケティング施策の振り返りをあまりしないのでしょうか?

振り返りのようなことはしています。部署の流動性はないのですが、部長だけは変わる環境だったので、部長が自慢できる数字や資料を作っておけばいいだろう、みたいな振り返りになります。

KPIをむしろ立てたくないという話になったこともあります。結果の良し悪しが分からないようにしたい、自分の好きなような進め方を、数字という結果に邪魔されたくない、ということからそういう話になったのです。

TVCMを作るにしても、調査も信じず自分の感覚だけで進めようとすることも多くありました。調査を疑うことも重要なことですが、最初から調査を信頼しなければ、反省をして先に進んで改善することはできません。

マーケティングに下手に長く携わっている人は、「俺10年以上マーケティングやってるんだぜ?」というだけで自分の発言を何故か絶対視して、消費者の視点とかけ離れたことを言ってくるので困ります。

一方、部長はマーケティング畑を経ていない人がつくことも良くあります。マーケティング、ブランドマーケティングの概念がありません。勉強したらわかるはずのことも、プライドが邪魔をしてか能力的な問題なのか、勉強もせずにとんちんかんなことを発言しています。

日系企業と書きましたが、花王や資生堂、ユニ・チャームといった、消費財系の企業はもう少ししっかりとやっているのかなという印象です。

日系メーカーではヘッドクォーターとして事業を指揮できることが魅力

-日系メーカーで働くメリットは何だと思いますか?

日本人で日本事業担当だと、当然ですがヘッドクオーターで働き、ブランドのすべてをコントロールできる立場になれます。外資だとヘッドクオーターに近い仕事をするのがなかなか大変だったりしますから。

例えばキーのコンセプトやメインビジュアルを自分の意見で作れたり、作ったものをコントロールしたりできるのは日本企業で働くメリットでしょう。

外国が作ったものを日本語版に翻訳するだけ、ということ自体はクリエイティブとしてはあまり面白くはないですからね。

もちろん外資系企業の中にも、日本発のブランドや日本の売上が諸外国と比較して圧倒的に高く発言権がある場合もありますが、ブランド数から比べるとそのようなブランドは少数なので、海外オフィスで作られたものを活用した上で動くことが多いです。

だからといってチャレンジングな仕事でない、マーケティングの仕事として面白くないというわけでは無いのですが。

日系では知識・ノウハウの上積みはされづらい

-マーケティングのフレームワーク等はいかがでしょうか。

日系企業に転職して感じたのは、フレームワークがないということです。思いつきで勉強会みたいなのはありますが、フレームワークとして知識を集積していくという姿勢がそもそもないので、知識が積み上がっていきません。

1回やばいなと思ったのは、ある製品のシェアが上がってきて、好調に売れている理由はマーケティングがうまくいっているからだという話になりました。

Good Practiceとして、マーケティング施策の成功例として事例が紹介された際に、いかに商品が素晴らしいか、技術が素晴らしいかの説明をしていて、それってマーケティング施策ではなく、ただ技術力が優れていただけなのでは?マーケティングは何をしたの?と思わざるを得ませんでした。

局所的にうまくいっていることはありますが、体系的になぜうまくいっているかを説明することはできていないですね。

例えば、製品に特定の技術の名前を入れただけで製品のスペックを買えなくともラテンアメリカで売れた事例がありました。その事例を展開しようとして、その技術を別の事業部の製品名にも特に調査や考えも無く入れよう、という話になってしまいます。

製品名を変えたことがなぜ売れたかの分析が出来ていない、マーケティング的な視点が無い、良い事例です。

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日本企業は営業ありき、マーケティングは二の次

-とはいえ日系企業はシェアを占めている分野が国内では多いですが、なぜあれだけモノが国内では売れるのでしょうか?

マーケティングよりも、営業が力をもっているのが日系企業ではないでしょうか。営業の人数も多く、販売店と密なコミュニケーションができています。花王や資生堂を見ていると、営業が充実しており店頭まで落とし込んだコミュニケーションが消費者とできているので営業の力を実感できます。

花王や資生堂はマーケティングもすぐれており、それを実現する営業部隊もしっかりしている印象ですね。

一貫性のあるコミュニケーションができ、その分効率的です。外資系企業では営業は人員も少ないですし、営業はどちらかというと花形では無いので、営業力の点では不利に立たされています。

日本企業は営業が強く、マーケティングありきの組織ではなく、営業ありきの組織のように感じます。

日本企業でよくあるのが、マーケティング組織が営業本部という名前の下に存在していたり、外資系に名前を準じた形でセールス&マーケティングという部署で一括りになっていたりする組織形態です。

営業とマーケティングが同じ部署になっており、1つのものとして見られるのです。営業優位を表していて、良い面ではマーケティング施策の顧客接点のポイントまで一貫性がある場合もあります。

しかし現場営業や良くても営業戦略ぐらいの経験しかない人が、ブランディングやマーケティングの組織のトップになっているというのは、あまり良いとは思えませんね。

リターンを気にせずチャレンジできる環境が日系にはある

-日本企業に転職して良かったことは他にありますか?

ROIをあまり見ないで仕事するというのは、「会社のお金を使って面白いことをしたい!」と考えるのであればやりやすい環境ですね。何かやってみたいことがあって、そこに予算がついて、リターンを気にせずにできる環境は、個人の願望をかなえる場としては、楽しいと思いますよ。

結果を出す必要があり、そこに具体的にマーケティングが貢献しなくてはいけない、数字を踏まえて説明を行う義務があると考えると、ROIやKPIを追わないのはおかしいと思います。

しかし、やりたいとや思ったことをやるという、個人の願望を優先することを楽しいと思う人も大勢いると思います。個人としての楽しさは様々ですよね。

また、数字の責任を負わずにやりたいことをやっていると、クリエイティブのクオリティなどで、調査や事前の計算ではわからないほどに大当たりすることがあります。

仮に調査をかけていれば、間違いなく低いスコアが出ていただろう内容のWeb動画が、若年層にシェアされて製品の認知度向上につながったこともありました。

特に今の時代、「buzzは起こすものではなく起きるものだ」と考えると、自由度を持って考えることも重要なのかなとは思います。

-他に日系企業のメリットは?

日本人が海外に行けることですね。日本人というだけで得をします。外資系企業だと、例えばフランス人やアメリカ人、インド人などが同郷のネットワークで、海外で働く機会を得ているのを良く見ます。

一方で、日本人がそういった機会を掴んでいる例は非常に限られます。日系企業だと、日本人だから海外のいたるところで駐在できる機会をつかみやすい、というのは海外で働きたい人にとっては大きいかと思います。

あとは、選択と集中が進んでいないメーカーも多い印象なので、他業種へのグループ内異動もチャンスがある印象です。

また、なんといってもクビになり辛いのは今でもあると思います。東芝みたいなことになると別ですが、基本的にはクビになるようなことは外資系より少ないと思います。

日系企業に巣くう中高年

-日系メーカーで働くうえで注意したほうが良い点は?

日本企業は使えない中高年がたくさんいます。会社も危機感を感じ、彼らの給料を大幅に下げる給与体系に変更するなど、コストダウンに成功しましたが、依然としてそこそこの給与をもらっているので、一緒に働く側からすると働いているだけでモチベーションダウンにつながります。

外資系では使えない中高年は、ひたすら店舗周りをさせられるなど、仕事ができない人は冷遇され続けていました。

また、日系企業だと、それなりに重要な部署に仕事ができない人がいるので心配です。これで会社は大丈夫なのかと感じます。

外資系と日系ではそもそも「ルール」が異なる

-日系メーカーに転職を検討している人にメッセージはありますか?

大手外資系でマーケティングをしていた人は特に気を付けたほうがいいと思いますが、違うルールで仕事が行われていることをしっかり理解したうえで、転職したほうがいいです。同じルールでやろうとすると痛い目に合います。

デメリットが多い印象ですが60歳まで転職せず安定して同じ会社で働きたい、やりたい商材があるのであればよいと思います。

日系企業は同じ年齢で見たときに、特に20-30代前半では責任も少ないことが多く、転職市場でステップアップにはなりにくいので、外資系から日系に転職する際はよく検討してほしいと思います。
<h2id=”編集後記”>編集後記

日系企業の悪さが目立つ内容であった。外資系はフレームワークやロジックを重んじてマーケティングをしているが、日本企業のほとんどが、マーケティングが弱いと言われているのを象徴しているようなインタビューだった。グローバル競争で勝っているのはトヨタなどの一部企業なのもうなずける。

現在日系メーカーにいる人は、外資へのチャレンジも視野にいれてほしい。日系企業は優秀な人材が働けるような環境を一刻も早く整備してほしい。日系企業にいる方はビズリーチに登録して是非チャンスを伺ってほしい。

今日は以上だ。

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