医者が異業種へ転職するというのは、珍しいと感じる人が多いのではないだろうか。
近年、マッキンゼーやボストンコンサルティンググループ(BCG)には医師免許を持つもの、医者としての勤務経験のある方が転職している。なぜコンサルは医者としてのバックグラウンドのあるものをひきつけるのだろうか考察してみた。
医学部を出ているような人だと、高校時代の友達も優秀な人が多く、そのつてで大手企業の知り合いも多いケースが大半だ。しかし、医者というある程度特別な世界を経験している場合、一般企業にすぐに馴染めるとは限らない。
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目次
医者から異業種のコンサルタントへ転身
医師免許をもつコンサルタントは2000年代後半から増えだしてきた。医者に限らず、弁護士や公認会計士出身のコンサルタントは多い。
弁護士は、大手ファームであれば、M&A業務に従事するなど、いわゆる町の法律相談ではなく金額の大きいビジネスに従事しているため、コンサルや投資銀行に転職してもビジネス領域で活躍する人が多い。
ウォール街ではロースクール出身者がむしろマジョリティである場合もある。それほど弁護士資格と投資銀行やコンサルとは相性がいい。また公認会計士も財務デューディリジェンス(財務DD)を行うためコンサルと互換性のある業務を経験している。
公認会計士の場合、財務DDを活かして、FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)と呼ばれる業務を専門とするコンサルに転職することが多いが。
一方、医者はどうだろうか。恐らく、コンサルに互換性のある業務はあまりないようにみえる。それではなぜ企業側がなぜ医者を採用するかを考えてみる。
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なぜ戦略ファームが、医者を積極的に採用するか
日本国内だと医者を受け入れているファームはマッキンゼー、ボストンコンサルティンググループ(BCG)の2社がメインだ。ゴールドマンサックスをはじめとする投資銀行にも流れていたが近年はほとんど見かけなくなった。
さて、マッキンゼー、BCGが採用する理由を考えてみる。理由は3点ある。
a.医者には研究者としての才能がある
まず彼らは、博士号取得者を採用している。研究者として、深いレベルで思考できる人は外資系コンサルティングファームで活躍している。
例えば、ローランドベルガー日本代表の長島聡氏は早稲田大学で博士号(工学)を取得し助手の経験もあるコンサルタントだ。ローランドベルガーに入社後は成果を出して、日本代表にまでのぼりつめた。
マッキンゼーにも多数の博士号保持者、もしくは博士中退の方がいる。医者の方も博士号を持っている方が多く、研究者気質の性格がコンサルでいきるわけだ。
ちなみに旧帝大の医学部出身者が医者のなかでも多いのがコンサル業界だったりする。
コンサルは、たった数ヶ月でクライアントの経営者と同レベルまで知識をインプットしなければならない。しかし、もちろん短期間で知識が追いつくわけはなく、結局のところ重要視されるのは「思考力」と「本質を捉える力」だ。
コンサルとして携わる領域に詳しい知見がなくとも、ベースとなる能力を備えている医者は、コンサルとして大歓迎なのである。
b.地頭の良さ
次に、地頭が非常に優れていることだ。トップファームは有名大学出身者が非常に多い。有名大学といっても早稲田大学は少ない。東京大学、京都大学、慶應義塾大学やハーバードをはじめとするMBA取得者だ。そして有名大学卒だけでなく、高校も高偏差値の出身者が多い。開成、筑波大付属駒場、東京学芸大学付属、栄光学園、筑波大付属、桜蔭といった中学受験のエリート軍団が多い。あくまで高校、大学は結果論であり、地方高校や、東大からは偏差値がかなり劣る大学卒の方もいる。
医師はこういった属性にかなり近く、難関試験を突破し、医学部に入学し、医師免許を取得している。日本の場合、医学部入試の難易度が高いため入試を突破した地頭の高い人間として認識される。ちなみにアメリカのメディカルスクール(医学部に該当)も入学するのはかなり難しい。
c.ヘルスケア案件の増加
最後に、マッキンゼーとBCGに多い理由としてこの2社はヘルスケア業界の案件が多いことだ。ヘルスケア業界のコンサルティング業務は2010年代からも継続して盛り上がってきており、ヘルスケア業界のコンサルティング業務は志望者をひきつける領域である。
ヘルスケア業界のコンサルティングは必ずしもヘルスケアの専門知識が必要なわけではないが、ヘルスケアに興味をもつ医学部、薬学部、バイオ関係の修士号/博士号をもつ方をひきつける。
もちろん、他社のコンサルも一部ヘルスケア業界を取り扱っているがどうもこの二社が強い。
実際に、医療業界はかなり複雑で、どこか不合理なことには、日本医師会の既得権益が関わっている場合もある。
そこらへんの知識や肌感覚を持っているのと持っていないのとでは、案件を進めていく上でのスムーズさが異なる。もしメンバーに一人でもこういった知識を持っている人材がいれば、チームとしてかなり役立つであろう。
このように医師免許を持つものを受け入れる理由が十分にあるのが戦略コンサルの業界だ。
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医師が異業種であるコンサルに転職する理由
医師がコンサルを目指す理由としては、医師としての仕事に限界を感じる人が多い。崇高な理想を持ち医師の業務に従事しており、医師の仕事に決して不満があるわけではない(医療業界への疑問は少なからず疑問はもっている)。主に東大医学部であるが、高校や大学の同級生がコンサルで働いているのを聞いて、医師出身者がいるというのを聞いてコンサルの門を叩く人が多い。学生時代の人脈はこういった形で生きる。医師ほどの確率ではないが、弁護士もまわりのコンサルの友人を聞いて知ることがある。
医師には医師もしくは研究者として働く以外にも選択肢があることを知ったときの衝撃は計り知れないだろう。そして実際に活躍している人がいると聞いたらますます興味をもちだす。このような形で新しい道に歩み始める。
実際、コンサルとしてダメでも医師にはすぐ戻れるため国家資格としての医師免許は心強い。こういった経緯でコンサルに飛び込んでいく。
一瞬話がそれるが、コンサルはダイバーシティがないように見えて、あらゆる業界の中でダイバーシティにあふれた業界だと思われる。よく事業会社から転職した人がそのダイバーシティに驚く。
特に、マッキンゼー、BCGであるとなおさら驚く。日本人、外国人、世界中の大学、多様な職業の出身がいるのだ。
有名すぎるが、元ミクシィの社長で、マッキンゼーOBである朝倉祐介氏は中学時代からジョッキーを目指し、オーストラリアに飛び立ち、身長の理由から挫折し日本に帰国後大検取得=>東大法学部という経歴だ。
仮に慶應の幼稚舎から医者になるような人だと、慶應という世界が常識になってしまい、そういった個性的なキャリアに出会わないまま終わってしまうことが多い。コンサルに入っていろんな刺激が受けられることが魅力的に感じるのであろう。
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医師免許をもつ元コンサルタント
メドレーの豊田社長は、開成、東大、脳神経外科医、マッキンゼー、メドレー代表という経緯だ。ベンチャーに明るくない人は詳しくないかもしれないが、メドレーはベンチャー業界ではかなり有名であり事業も堅調にのびており、素晴らしい会社である。
代表取締役医師 豊田 剛一郎
1984年生まれ。医師・米国医師。東京大学医学部卒業後、脳神経外科医として勤務。米国での脳研究成果は国際的学術雑誌の表紙を飾る。日米での医師経験を通じて、日本の医療の将来に対する危機感を強く感じ、医療を変革するために臨床現場を離れることを決意。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて主にヘルスケア業界の戦略コンサルティングに従事後、2015年2月より株式会社メドレーの代表取締役医師に就任。オンライン病気事典「MEDLEY」などの医療分野サービスの立ち上げを行う。
http://www.medley.jp/about/officer.html
現在も医師をつとめる武藤氏もマッキンゼー出身だ。経歴がすごすぎてよく訳がわからないのが、マッキンゼーで2年の勤務経験を持つ。
武藤真祐(むとう・しんすけ) プロフィール
医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニック 理事長
一般社団法人高齢先進国モデル構想会議 理事長
NPO法人ヘルスケアリーダーシップ研究会 理事長
医学博士、認定内科医、循環器専門医、米国医師資格試験合格、米国公認会計士、executive MBA。
1990年 開成高校卒業。
1996年 東京大学医学部卒業。
2002年 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。
2014年 INSEAD executive MBA修了。
略歴
1990年開成高校卒業。
1996年東京大学医学部卒業。
2002年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。
東京大学医学部附属病院、三井記念病院にて循環器内科、救急医療に従事。
2004年より2年半、宮内庁で侍医を務める。
http://www.you-homeclinic.or.jp/Dr_muto/misson/
医師の富坂美織氏もマッキンゼー出身だ。
名 前 富坂 美織 (とみさか みおり)
経 歴 産婦人科医、医学博士。
順天堂大学医学部卒業、東京大学医学部研修医、愛育病院産婦人科医を経て、ハーバード大学大学院へ留学。卒業後、マッキンゼーにて、コンサルティング業務に携わる。山王病院などを経て、現在は不妊治療が専門。順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師。
https://mioritomisaka.jp//https://mioritomisaka.jp/
コンサルに不向きな医師
ここで論じるのだが、医師はコンサルで活躍するのが難しい。ビジネスに触れたことがないために、いくら頭がよくても適応するのが難しい。笑う人もいるかもしれないが、医師出身でコンサルになってエクセルでつまずく人が実際にいる。
コンサルのエクセルスキルは想像以上なためゼロからきた医師は最初は本当に苦しい。たかがExcelができないだけで仕事が進まず、バリューが出しづらくなる。
そのため医師は比較的早くコンサル業界を去る例も少なくはない。分かる通り医師はあまりコンサルには向いていない。それでも医療知識をもち、医療業界に貢献しようとコンサルで学びそれを再び医療界に戻り還元している方を見ると大変な経緯を抱く。
医学部にいったら医者になるべきなのか?
筑波大学の医学部を卒業した女性がTBSに入社したことで税金の無駄遣いと批判を浴びた。医師免許は治療行為をする医者になるためだけに存在するのではないと私は声を大にしていいたい。
製薬業界を変えるコンサルタントになってもいいし、医療報道を変えるテレビ記者になってもいいわけだし、必ずその知識が生きる場面がどの仕事でもあるはずだ。
お金のためだけに働く医師になるよりよっぽど素晴らしいと思う。本題とはそれたが、医師にも多様な進路があっていいと思う。
医師などの職業から異業種へ転職する場合
異業界から転職する場合は、転職エージェントにはあまり頼らない方がいいかもしれない。あまりにもまっさらな状態なので、エージェントに変なバイアスを植え付けられるかもしれないからだ。
そのため私は知人ベースで医師から別キャリアを当たった人に会ってほしい。それから転職エージェントにあってほしい。
転職サイトを登録すべきなのだが、医師等を扱えるエージェントはわずかだ。仮に登録するのであれば、これから紹介するサイトを選んでほしい。
まず登録すべきサービスは、アクシスコンサルティングだ。コンサルへの転職では日本有数の実績を有しており、主要なファームのほとんどと取引している。コンサルに入社する前だけでなく、入社してからも活躍出来るような支援を受けられる。
また、ビズリーチは優秀な医師を民間企業に転職支援の経験があるので登録してほしい。民間転職を考えているならまずは登録したほうがいい。リクナビ、マイナビ等は十分な情報を得られないので、登録する価値がない。
医師は素晴らしい職業であり、必要な仕事である。だが、医師免許を持っているからといって医師として働かなければいけない訳ではない。
医師の方が、民間企業で働くことで、かえって医療業界がさらにさらに盛り上がることを祈る。
今日は以上だ。