前編では、広告代理店と事業会社のマーケティングの違いについて対談していただいた。大手広告代理店の社内組織やクライアント側のマーケティングの動きについて語った。
後編では、広告代理店と事業会社の間の関係について対談していただく。
前編はこちらから。
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目次
プロフィール
sym氏
外資系企業でマーケティングに従事。外資系、日系ともにマーケティングの経験がある。
yuuu氏
新卒から大手広告代理店に勤務。大手広告代理店の赤裸々な様子をtwitterで発信している。また、業務の傍ら、就活支援を行っている。
広告代理店も事業会社のマーケティング部門も「実行」からは遠い
yuuu:よく、就職活動生から「代理店は実行に関われないのでは」という質問を受けます。
コンサルは実行までできないよねみたいな。
事業会社と代理店を比較する際に、実行の部分についてはどのようにお考えですか。
sym:私もその質問は良く受けますが、実行って何のことを指しているのだろうかと思いますね。
プランを実行した結果を一番早く見ることができるのは、事業会社というのは確かです。
ただ、実際にモノやサービス等がお客様に届く瞬間、触れるポイント自体を実行と言っている就職活動性もいる気がします。
その意味では、事業会社であっても、マーケティング部門も実行からは遠いですよね。
メーカーであれば、最後にモノを売るのは営業ですし、もっというと小売だったりもします。
直接消費者が買っている瞬間に携わっているわけではありません。もちろん、成果に対する責任という意味では、事業会社の方が広告代理店より、責任を負っているという側面はありますが。
yuuu:弊社が関わった広告が世の中に出ていくという意味では実行といえるのかもしれませんが、最終的に責任をもって実施の判断をするのは事業会社ですしね。
広告代理店が表に出ることはありません。
ただ、我々も最終のところまで食い込んで行きたいと考えています。
もちろん最終責任自体を負うのはどうしても事業会社になっていきますが、広告代理店側も、最初から最後まで、戦略の部分まで取り組もうとしています。
そうしないと、コンサルティング会社に事業戦略部分を食われていきます。
また、市場が伸びているデジタル領域についてはサイバーエージェント等のデジタルエージェンシーに市場シェアを食われていきます。
こういう経緯があって、広告代理店は仕事の再定義をしています。
これまでのモデルとは異なるやり方でのアプローチを試みています。
日系企業は、マーケティングの戦略部分を代理店に丸投げする
sym:大手広告代理店って、どこまでクライアントの戦略部分に関われるのですか。
外資系では、ある程度戦略や方向性をブリーフやオリエンの形で固めて代理店に投げていますが、私がいた日系企業も含め、日系企業だと、丸投げすることが多いと聞きます。
yuuu:外資系は確かに、ある程度決まった状態で投げてくると思います。
勿論、予算が決まっているなかで、メディアプランニングをどうするかみたいな話は、代理店が行う仕事です。
また、いまsymさんがおっしゃったように、丸投げしてくる会社の方が圧倒的に多いです。
事業会社のマーケティングの人たちって、社内でも割と偉い立場で、お金を我々に払ってくれるので、我々からしても当然偉い人たちです。
しかし実際のところ、事業会社のマーケティング部門で全部できたら、広告枠の買い付け以外では、大手広告代理店って必要ないと思うんですよ。
それでも広告枠の買い付け以外で仕事があるということは、事業会社のマーケティング部門で、できないことが多いというわけなんです。
事業会社側には、そこまで考えられなくて、社内の説得もできない人がいます。
そう思うと、事業会社が決めていることより、広告代理店側で決めることの方が、圧倒的に多いです。
事業会社は、考えるというより、広告代理店側が考えたものを判断する人かなと思っています。
だからこそ、良いものを考えて、良いものを出さないと納得されません。
sym:そう思います。ほとんどの会社は丸投げをするんですよね。
外資系のマーケティングにいたときは信じられませんでしたが。
外資系企業にいたときに、とあるマーケティング業界の有名な方が、「代理店のプランナーっていらないんだよ。マーケターが考えればいいんだよ」とおっしゃっていたことがありました。
自分で考えられるなら、代理店は本当にいらないんですよね。
例えば、ターゲットがあって、目指したい態度変容があって、これを達成するにはリーチ何千万人、CVRどれくらいにして、新規ユーザー、リピートユーザーこれくらいにしてください、とプランを策定しますよね。
これに近づけるために、テレビの後は、デジタルですねみたいなところを考えてもらいます。
細かいメディアの選定や、クリエイティブのアイデアを落とし込むところを、広告代理店に考案してもらいます。
もちろん、プランニングに協力してもらうこともありますが。
外資系でマーケティングの組織がしっかりしているところは、代理店にはそのように関わってもらっています。
私の会社だけかもしれませんが、日系企業にいたときで、極端な時には、目的の説明もなく、広告代理店へのオリエンの際の資料さえも特になく、なんとなくかっこいいもの何月につくって、みたいな丸投げをします。
こうなると、マーケティング部門の仕事はなくて、偉そうにしてるだけなんですよ。
しかも、広告代理店への態度もめちゃくちゃ悪かったりします。
マーケティング部門も変な聖域みたいになっていたりしてしまいます。
社内からは、何をやっているかわからないけれど、センスがある人たちというイメージだけが先立ち、余計偉そうになっています。
これでは、代理店も本当の意味でのパートナーにはならず、表面上は全力でやってはくれますが、本音で成功のために一生懸命考えようという姿勢になりません。
さきほどyuuuさんがおっしゃった、広告代理店が戦略から入るという方針の例でいうと、ある外資系企業に在籍していた時は、大手広告代理店と製品開発を一緒にやりました。
目的を決めて、コンセプトを考えるための、ブリーフやオリエンをします。
そこからアイデアを一緒に出して、アイデアが複数出てくるので、これは研究開発部門で実現可能か、とさらに深く協力をしていきます。
よって、大手広告代理店が最初の製品開発段階を含めた戦略策定から関わってきます。
ただ、これは珍しい例で、世の中では丸投げする企業が多いですね。
しかも自分たちではそれを丸投げと思っていなかったりもする。
yuuu:そうですね。マーケティング部門自体がしっかりしている外資系の場合は、方向性が固まって降りてきます。
日系の多くは、どうしたらよいか分かっていないところが多いです。
売上が落ちているからどうしたらよいか、というところから来ています。
戦略コンサルに投げているような次元の課題を、広告代理店に投げてくれます。
その意味で、広告代理店と戦略コンサルの垣根がなくなってきます。
代理店の強みとして、戦略から広告プランを含めた実行までをとっていこうとしています。
戦略コンサルも、広告代理店の仕事に入ってきます。
sym:そうですね。
広告代理店の価値は戦略と感情への働きかけの両方にある
sym:事業会社側では、その戦略を考える部署も、場合によって違うんですよね。
BtoCのメーカーだとマーケティングですが、不動産だと経営企画がそこを担っていたりもすると聞きます。
yuuu:物事を決める最終権限はクライアントである事業会社側にありますが、多くの場合ベストなソリューションの判断基準がないんです。
だから営業が大事で、担当者の心を動かせることも代理店にとって重要ですね。
純粋なストラテジーを考えることより、心を動かせることが大事になっています。
例えば、ある人が誕生日会を開くという情報を聞きます。そこで先に店に連絡して、会計してワインを置いてもらうんですよ。
sym:それは領収書切るんですよね。
yuuu:いや切らないです。領収書きったらダサいと思われるので。
大手広告代理店は心を動かせる、すごい社員がいるんだと思われたいんですよ。人の心をどれだけ動かせるかが広告代理店の仕事です。
店の情報を弊社に聞いてくれるお客さんが多いんですよ。おいしい店知っているよねってことで。
私は予約した店の情報を聞いたら誰にも気づかれないようにサプライズをしかけます。
だからストラテジーも大事なんですが、ストラテジー以外のところでも、「御社はここまでしてくれるのか」というところで、他社を圧倒していきます。
sym:そういった感情への働きかけはもちろん重要なんですけど、だからこそ、事業会社側に明確な判断基準とかがないと、心や感覚だけで決まってしまうんですよ。
本当は、この人と接するのは気持ちが良い、だから買ってやろう、だけでは危ないんですよ。
判断する基準が無いと、目的達成できないプランでも採用してしまうかもしれない。
だから接待を禁止するのはある意味では理にかなっていますよね。
外資には多いですが、事業会社側で、接待を禁止している会社も多いです。
よくしてくれた営業の○○さんが言うから、プラン内容は劣るけど採用、となってしまっては危険なので。
代理店の価値は、戦略と感情への働きかけの両方の面があってこそ、ですかね。
yuuu:他の代理店はそこまでやりませんよね?という部分は大事です。
クリエイティブや戦略だと、競合の博報堂が強い部分も当然あります。
でも、戦略はもちろん強くて、他の代理店がやらないところまでやりますよっていう最後のプラスαで勝負できるのが、強みですね。
広告代理店は事業会社からブリーフィングを受け、すり合わせていく
sym:広告代理店は、事業会社に、マーケティングのブリーフィングを受けるうえで、不満に感じる点はありますか。
例えば、目的が無いから困る、みたいなことってあるじゃないですか。
yuuu:確かに、目的があったほうが双方の認識のすりあわせができて仕事が進めやすいのは事実です。
しかし、目的がないから、もう一回オリエンやり直してくださいとクライアントに言うわけにもいきません。
例えば、目的が設定されていなければ、目的を考えるのも、我々広告代理店の仕事であると考えています。
話していくなかで、ゴールはここで良いでしょうか?みたいな形で、双方のすり合わせをしていきます。
仮に目的が設定された状態で、事業会社側がオリエンしてきて、これで本当に良いのか、目ざすところはここなのかと問いなおすこともあります。
解決したい課題がこれだったら、オリエンで伝えた内容をやってもだめですよね、ということもあります。
また、本当は他のことが課題なんじゃないですか、ということもあります。
そのため、最初のオリエンの通りにやらないこともあります。
事業会社は広告代理店に明確な目的と情報を適切に伝える
yuuu:事業会社側は、広告代理店とコミュニケーションをとるうえで、気を付けていることはありますか。
sym:僕個人として気を付けていることは、何を目指しているかを共有することですね。
目的を明確にしてブリーフをしないと、MKTがいる意味がないと思っています。
この条件は抑えて、このKPIで、この商品を出さなきゃいけない、なぜこのプロモーションをしなきゃいけないか、という背景みたいなところは、出せるギリギリまで共有します。
なぜこれをやらないといけないか、という情報を多く渡しておくことですね。
yuuu:そうですね。できるだけ情報ほしいですね。
sym:ただし、情報は伝えすぎてもミスリードになる危険性もあるので、ミスリードにならないように、情報の取捨選択は考えます。
yuuu:そうですね、正しく導くようなコミュニケーションって大事ですね。
sym:地獄みたいな状況というのがあって、目的とか方向性がない状態で、広告代理店にオリエンすると、広告代理店が何をやったら良いかわからないというときがあるんです。
事業会社側の責任者が、「なんかかっこいいのをつくって」のような形で丸投げすると、何をやったら良いかわからない状態で広告代理店が案を出してきます。
事業会社側が、フィードバックもせずに「これは違う、ボツ」みたいなことだけを言って、ゼロからやり直しさせる、みたいなことを繰り返す、地獄絵図みたいな光景が展開されたときもありました。
こっちからは何も言わないけど、こっちが考えていることをあててごらんよ!みたいなマインドで、広告代理店に接している場合も、代理店側からはきつい状況ですね。
こんな会社だと、事業会社側の部下もきついし、広告代理店側もきつくなり、代理店の営業も社内でも信頼を失って、仕事を受けてもらえなくなっていきます。
こんな感じでやっていると、当然代理店からも良いものが出てこないので、広告代理店側に払うお金を値切ろうとしていく、など双方にとってよくない悪循環になります。
yuuu:広告代理店側も、クライアントによっては引き受けないときがあります。やればやるほど赤字になるような会社は、クライアントから切るようにしています。
sym:その方が良いですよね。
ただ、私が在籍していた会社は弊社にとってもグループ企業全体で見てかなりの大口顧客だったので、自分たちの担当を切ることができなくて大変そうでした。
編集後記:
外資系メーカーと大手広告代理店の現役社員による対談は、いかがだっただろうか。
後編では、広告代理店と事業会社の間の関係について対談していただいた。
転職の可能性は、広告代理店、外資メーカーともに門戸をひらいており異業種転職もおこなわれている。ビズリーチは幅広く転職を支援している。外資系日系問わず様々な求人がある。
また、JACリクルートメントは外資系メーカーの転職に強いエージェントだ。転職サイトのビズリーチと併用しよう。
また、今回のお二人とも、ビズリーチ・キャンパスでOB訪問を受けているため新卒の方は利用してほしい。