前回、取材させていただいた海外在住の駐在員の方から、再びお話する機会があったため再度取材させていただいた。日系の1流メーカーの駐在の状況がうかがえる。ややネガティブな内容だが取材で話していただいた内容をそのまま掲載させていただくのでご注意いただきたい。
前回の記事を読んでいない方はこちらも併せて読んでいただきたい。マネジメントする側の方にもおススメしたい。駐在が楽しいという話はよく聞くので今回は駐在の悪い例というくらいの認識をもっておくとよいかもしれない。
なお、駐在が決まって転職したいと考えている人であれば、スカウトメールが届く、ビズリーチに登録しておくと良いだろう。幅広い案件数を保持しているマイナビエージェントも併用するのにおすすめだ。
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目次
相談する度に上司に怒られるため相談しづらい環境へ
-その後、環境に変化はありましたか?
変化はその後なく、つらい状況が続きました。毎日飲み会に連れ出されてはダメ出しをされて最後は割り勘をする毎日で日本に帰りたいと思っていました。
前回の取材の直後から飲み会の頻度が大きく減って、楽になりました。
-上司との関係は少しでも良い方向に改善されましたか?
全く改善されていません。同じ部署に部長と課長がいますが、課長がほとんど面倒を見ないため部長に直接レポートをあげていますが、部長から怒られる毎日です。
相談にいっても怒られるため、相談に行って簡単なことを聞くことすらはばかられるようになりました。
話す度に怒られるというのは自分を委縮させてしまいなかなか仕事のインプットを得られる環境からは離れていきました。
日本にいたときはそこそこ仕事もできていた自信はありましたし周りともうまく人間関係を形成しできていましたが、タイでは全く気質が合わずつらい状況です。
課長と部長の指示が異なるため、課長に言われて作った資料が部長が意図する内容とは正反対の内容ということでなぜか部長から私だけ怒られてしまいます。
タイ人の離職率が高く教育ができていない現場
-本日はもう少しタイの話を聞かせてください。以前タイ人のマネジメントの難しさをおっしゃっていましたがマネジメントはうまくなりましたか。
なかなかタイでのマネジメントには苦労しています。現地のタイ人スタッフに指示を出す立場ですが、難しさがあります。
こちらのお願いした作業のアウトプットがイメージしていたものと全然違うものが出てきます。
ではしっかり時間をかけて説明をしたら、いいアウトプットがでてくるかというとそういうわけでもありません。
製品を作るにあたってのコスト構造や仕様をそもそもわかっていない前提知識の問題があります。
-しっかりと会社側が教育すべきでは?人材の採用水準にそもそも問題があるように感じますが。
人材に関しては、全員大卒なのである程度のレベルは保たれています。現地の中での中の上クラスの人材が入社してきているイメージですね。
よって人材は採用自体はできているだけです。
では教育に関してですが、教育をすべきというのはその通りです。教育をしていないかというとしているのですが、すぐに辞めてしまいます。
教育をしても辞めるから会社として教える仕組みもままならない状態となっているのが今の状況です。すぐに辞める会社だからか向上心が全くない人々が集まっています。
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タイ人への裁量権が渡せていない
-タイ人側の責任にやや転嫁している節がありますが、企業側、つまり現地をマネジメントする日本人側の問題点は?
タイ人に仕事を任せようとしません。タイ人に裁量を渡すことができればよいのかもしれませんが基本的には現地を支配する日本人がマネジメントし重要な仕事はほとんどやってしまうのでタイ人がやることはありませんね。
加えて、日本からきた資料を日本語のまま渡すという問題点があります。翻訳するかしっかり解説をするかという作業が必要ですが会社としてやっていないです….
-十分に体力のある企業なのでマニュアルをタイ語にするくらい簡単だなと思ってしまいます。タイ人で出世している人は?
ごくまれに部長クラスに出世する人はいますが、タイ人は管理職に就くことはほとんどありません。完全にタイ人と日本人で分離が起きている状況です。
また私が働いているエリアのタイ人は残業をしないため時間になったら絶対に帰ります。一方朝も遅刻せずくるので時間内においては最低限働き終わったら帰るというイメージです。
遅刻しないのは一定回数遅刻をしたら給与減のペナルティを課しているからかもしれません。
-そのような状況ではタイにオフィスを構える必要はないのでは?教えるコスト等考えると採算が取れない気がします。
製造現場の作業を人件費の安いスタッフに任せることで日本でやるよりもコストダウンが十分にできます。
製造現場の煩雑な作業はある程度教えることで、組み立て、製造の部分を任せることができます。
また、現地で組み立てし現地の会社から材料を調達するため現地業者とのやり取りはタイ人に任せたほうが語学や商慣習理解的な意味でよいです。
給与格差は7~8倍
-タイ人と日本人で給料はどれくらい違うのでしょうか?
だいたい、タイ人は2万バーツ(*1バーツ=3.3円)くらいです。日本人はその7~8倍くらいはもらっています。給料の格差があります。
給料を知ったとき驚きました。同じ場所で同じ仕事をしているのに給料の差がこれだけあるのかと。
同じ人間で同じアジア人なのになぜこれだけ格差があるのかと。搾取しているのではないかと心が痛むときもありました。
会社公式の飲み会でタイ人、日本人混ざって飲み会に行きますが、傾斜をかけるとはいえ、タイ人にとってこの飲み会代は大きいものだなと思うとますます心が痛みました。
傾斜はもちろんタイ人:日本人=1:10くらいですがそれでも良心の呵責にさいなまれるのです。日本人がタイを侵略してるとさえ思いました。
タイ人と仲良くしたいと思う気持ちはありますが、格差がありすぎるとそのコミュニティに入っていけないんじゃないかと壁を自分で作っています。
ずっと日本育ちだったので異文化に溶け込むという経験もないのでなかなか難しい部分です。
-タイ人は給料が低いということですが生活自体は厳しいのでしょうか?
贅沢をしていないので貧しいとかはぜんぜんなく、普通の生活ができます。贅沢がどんなものかを知らないといったほうが正しいかもしれません。
元々の気質もあるせいか落ち込んでいたり、つらそうな雰囲気は少なくとも私が話したなかでは感じられません。
ちなみに給料2万バーツはタイでは高いほうではありません。田舎なのでコストがそれほどかからないというので消費額も少ないでしょう。
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日本からきているスタッフの問題点
-もっとタイ人スタッフとよりそって仕事をすることで離職率も会社として下がり結果教育コストも下がるのではないでしょうか?
現在の状況で、タイ人スタッフをもっとマネジメントするにはパワーを身に着けた方がよいです。
寄り添うとかではなく割り切ってやったほうがうまくいくと思います。マネジメント側の目線にたって仕事をすすめたほうが全体としての生産性はあがるでしょう。
-果たしてそうでしょうか。きちんとした対話によってお互い納得がいき一体感がでる気がします。日本人側のメンタルの問題があってそもそもあきらめている節が感じ取れました。
恐らく日本で働いている通常の人だと、対話がタイ人とできると思います。しかし、送り込まれているのはパワーがあって、力づくでなんとか物事を進めようとする人たちです。
タイに限らず現地では問題がたびたび発生し、話し合いだけではなんとかならず強引に物事を進める事態もあります。
そういったときに論理的に物事を考える人よりパワーで押し込む体育会系に近い人のほうが適しているのかもしれません。
そのような人間ばかりが集まってきていると対話などあるはずもなく、自分より下のポジションの人をおもんばかるような行動は全く見て取ることが残念ながらできない状況です。
管理職以上は鬼となって現地のスタッフをコントロールしているのかもしれません。会社として対話をする姿勢をもっておくとよくなるでしょうが。
-現地のタイ語の習得はしているのでしょうか?
タイ語の習得をしている人はほとんどいません。一部興味をもって勉強しているでしょうが、ほとんどの人はタイにそもそも興味がないのと、仕事も生産のための拠点なのでタイ語ができることはメリットになりません。
日本人は日本人だけで固まりゴルフ等に興じています。日本人のためのゴルフ場もあり1回1万円程度でいけます。もちろんこの金額だとタイ人はいけませんよね。
気軽にコンビニにいけない環境
-駐在のつらさは他にありますか?
タイの田舎にいるため、コンビニ等に気軽にいけません。運転手付きの車がありますが、上司も一緒にいるのでなかなか自分の都合で言い出せません。
-コンビニくらい言えばいいのでは?
仕事で散々怒られて委縮してしまっていて、コンビニに行くことを伝えて怒られることを考えると何も言わないほうがましです。本当に委縮していますね。
家族連れで来ている人がいないため、家族との用事で抜ける人がいなく、会社の人とだけ接する状況なんですよ。本当につらいなと思います。
かといってタイは危険な地域ではないので、危険手当もないのですが、田舎のため実質外出できない状態です。
危険手当が出る地域は夜間外出禁止となっています。外出できないこともあってややうつ気味に今なっているような気がします。車も安全面から自分では運転できません。
-海外駐在を考えている方にメッセージは?
逃げ道のない駐在はつらく会社の人と24hいることになります。職場の状況を事前に収集して、駐在先を考えましょう。仮に日本の地方だったら車で遊べたり、上司も家族できていたりするので自分にそれほどかまったりしません。
そういう逃げ道があるかどうかも考えておきましょう。
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編集後記
駐在はとにかくつらいというのが今回取材した方の意見だった。賛否両論ある内容だろう。インタビューをしながら私自身の意見を述べたくなることが多かった。
今回はタイ人と日本人という構図であったが、通常の部下と上司の関係においても裁量権を与えない問題は発生しているだろう。いずれにせよ相手の意見をくみ取ることは必要だ。
取材させていただいた方は、現在も精神的につらく、このような状況の人がいることをぜひ伝えてほしいということだった。
どうも日本人側のマインドの問題が大きい気がするが、タイに送り込んでいる人の問題を痛感させられた。誰もが知っている1流企業でこのような状況とは将来を危惧してしまった。
ちなみに転職も考えているとのことだった。海外からでもスカイプ等で転職エージェントが相談にのってくれるので転職サイト等活用し、余りにつらい場合は転職を検討してほしい。
転職サイトのビズリーチを利用し、海外からでも対応可能な転職エージェントと話そう。
エージェントの質の高さであればマイナビエージェントも併用して登録しておくと良いだろう。
ハイキャリア向け求人に特化したいという人であればJACリクルートメント、コンサル業界に特化して転職活動したいのであればアクシスコンサルティングも併用しよう。
ちなみに海外勤務経験があることがわかると多くの転職エージェントが興味を持つのでおすすめだ。ぜひ使ってほしい。
今日は以上だ。